訪問時に撮影された「証拠写真」

実際に、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の2026年2月8日付記事には、伊藤氏の親友で、講師として頻繁にメディアラボに招聘されていたビジネス・ソーシャルメディア大手「LinkedIn」の創始者であるホフマン氏が、伊藤氏とリトル・セント・ジェームズ島を訪問した際に撮影されたのではないかと思われるエプスタイン文書由来の写真が掲載された。

「エプスタイン島」訪問時に撮影されたと思われるくつろいだ様子の伊藤穣一氏
出典=米司法省
「エプスタイン島」訪問時に撮影されたと思われるくつろいだ様子の伊藤穣一氏

写真では、伊藤穣一氏がスマホ画面を確認しており、その右にサングラスをかけた黒シャツ姿のホフマン氏、そして白シャツ姿でこちらに背を向けた眼鏡着用のエプスタイン氏が確認できる。3人の後ろには、乳房をグロテスクに強調した少女像のようなものが置かれており、いかにも「乱交島」にありそうな淫靡な雰囲気が醸し出されている。

テーブルの上には、エプスタイン氏の所有と思われるiPhone 5(2012年9月発売)らしきスマホが写っており、2013年10月以降に伊藤氏とホフマン氏が連れ立って島を訪れた可能性と矛盾しない。

また、2014年3月22日には伊藤氏とホフマン氏が、ニューメキシコ州にエプスタイン氏が所有していた「ゾロ牧場」を訪問する予定であったことが、秘書のグロフ氏のメールから判明している。実際に両人が牧場に行ったかは不明だが、ゾロ牧場では長年にわたり性的暴行や虐待の疑惑があった。

さらに、2014年9月2日にはエプスタイン氏自身が、著名なコンピューター科学者のダニー・ヒリス氏宛てのメールで、「リード・ホフマン、伊藤穣一、それにもしかしたらイーロン(マスク)が12月6日の週末に島に来るぞ。(君も)来いよ」と誘っている。実際にはヒリス氏やマスク氏は来島しなかった模様で、代わりに11月29日にエプスタイン氏が伊藤氏とホフマン氏を伴いエプスタイン島に到着していたことが、ハーバード大学の理論物理学者であるリサ・ランドール教授と交わしたメールで判明している。

伊藤氏はこれまで、このエプスタイン島への訪問について語ってこなかった。エプスタイン文書によれば少なくとも3回の訪問の可能性があることから、それが事実なのか、さらに島で何を見て、何をしたのか、説明する責任があるだろう。

当然、「エプスタイン島が少女たちの性的搾取と不可分との認識はあったか」「島で少女たちからサービスを受けたか」という質問にも伊藤氏は答えなければならないはずだ。

ただちに「性的搾取への加担」を意味するわけではない

同時に、ここで押さえておくべき重要な点は、伊藤氏が実際に島を数回訪問していたとしても、それだけでは犯罪や不適切な行為の証拠にはならないことだ。

米司法省は伊藤氏を含め、エプスタイン文書に名前が出てくる者をひとりたりとも訴追していない。

性的搾取の被害者であるバージニア・ジュフリー氏(2025年自殺)による証言では、2001年にエプスタイン島で、伊藤氏と同じくMITに所属していたコンピューター科学者で「人工知能(AI)の父」ことマービン・ミンスキー教授(2016年死去)との性交を強要されたという。ただこの証言は物証を欠いている。

しかし、今のところ被害者による証言の中に、加害者として伊藤氏の名前はあがっていない。もし伊藤氏が未成年に対する性犯罪に加担していた疑いがあれば、米司法省によって逮捕・起訴されていた可能性が高いが、そうなっていないということは直接加担した可能性が低いことを示している。

伊藤氏はMITメディアラボ所長として、MITがエプスタイン氏から受領した総計85万ドル(約1億3000万円)の寄付のうち、およそ62%に相当する52万5000ドル(約8030万円)をエプスタイン氏から受領していた。その責任を取り、エプスタイン氏の自殺から間もない2019年9月に、謝罪して同職を辞している。一応、みそぎは済んでいるとも言える。

とはいえ、伊藤穣一氏は現在千葉工科大学の学長を務めており、日本社会で責任ある立場にあるのだから、メディアの前に出て経緯をきちんと説明すべきではないだろうか。