「エプスタイン氏からの寄付」を隠蔽

また、伊藤氏は一貫してエプスタイン氏からの寄付の出所を隠そうとしていた。

エプスタイン氏が2008年に人身売買と未成年者性的虐待で有罪となり、MITによって「寄付不適格者」に指定されており、MITの倫理規定に抵触することを知っていたからである。

そのため、寄付の受け入れに際しては、エプスタイン氏が別人や他大学への寄付を行い、それらの個人や機関がMITに再寄付するという、合法だが脱法的なマネーロンダリングまがいの手法が用いられたという。MITが2020年1月に第三者の法律事務所に依頼して作成した報告書によると、当時のMIT副学長ら上層部はこれを黙認し続けた。また当時は、有罪認定された人物からの寄付を禁ずる明文規定もなかった。一方で、伊藤氏が寄付の出所を隠そうとしたことは、道義的にやましいことがあると認識していたからに他ならないだろう。

メディアラボ職員たちの間ではエプスタイン氏との交流を隠す目的で、「名前を言ってはいけないあの人」とか、『ハリー・ポッター』シリーズに出てくる悪役の「ヴォルデモート」の名で呼ばれていたという。

米ニューヨーカー誌は、伊藤氏の予定表には通常、面会する人物のフルネームが記載されているにもかかわらず、エプスタイン氏だけはイニシャルになっていたと報じている

バレないように自宅で会おうとしていた

エプスタイン文書では、2017年にMITのすぐそばにあるボストン市のハインズ・コンベンション・センターで開催された全米科学振興協会(AAAS)の年次総会で、伊藤氏がエプスタインを有力な科学者たちに引き合わせようとしていた事実が明らかになった。

その準備段階の2016年6月に伊藤氏がエプスタイン氏に宛てた「禁じられた研究(Forbidden Research)」と題されたメールで、伊藤氏は次のようにエプスタイン氏を誘っている。

「禁じられた研究パネルの2日目は、僕の家から数ブロックしか離れていない場所で開かれるんだ。リード(ホフマン氏を指す)も来るよ。興味深い面々をパネルから引きずり出して(drag over)、僕の家で会わせてあげる。君がリードにも同席させたいなら、そうする。(著名な哲学者の)テンジン(プリヤダルシ)も会議に来るぞ」

ここで注目されるのは、伊藤氏がエプスタイン氏と自宅で会うことにしている点だ。自宅にパネル参加者の一部を無理矢理連れてくるようなニュアンスで話を持ちかけている。

おそらく会議に出席している科学者たちにエプスタイン氏と会っているところを見られたくなかったのだろう。