「汚名返上」の手助けをしていた?

では、エプスタイン氏は多額の寄付を受ける側の伊藤氏からどのような見返りを受けていたのだろうか。

前述のように、エプスタイン氏には2008年にフロリダ州において性犯罪者として起訴された過去がある。有罪となったことで彼の信用は大きく傷ついたわけだが、そのエプスタイン氏が、汚名返上し「太っ腹で気前のいい富豪寄付者」という地位を得る手助けをしたのが伊藤氏だったと言えるのではないか。

ニューヨーク・タイムズ紙が2025年12月に掲載した大規模調査報道によれば、エプスタイン氏は「自身に正統性を与える人脈に依存していた」とされる。

伊藤氏とともにエプスタイン氏と積極的に交友していたホフマン氏は、2023年にウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対し、「私はエプスタイン氏との交友関係を通して彼の評判回復の手助けをしてしまったのであり、被害者たちが正義の裁きを得るプロセスを私が遅らせてしまった事実に悩み苦しんでいる」とメールで回答している。

実際に、エプスタイン文書で公開されたメールを分類すると、「人身売買と性的虐待(7800件)」「訴訟関係(4万6380件)」「エリート人脈(2万2118件)」「科学とアカデミア(8095件)」「知的探求(1万437件)」「慈善事業と評判回復(2407件)」となる。人脈や科学関連のメールの多さは、エプスタイン氏が自身の犯罪に起因する訴訟や当局からの追及を、学界やテック業界の超エリートたちとの交友や寄付によって抑え込もうと努力していたことを示している。

また、ウェブ上において性犯罪者としてのネガティブなイメージが増殖していることに対して、エプスタイン氏は2008年の有罪確定後から「評判回復屋」を雇って対処させていたと報じられている

自身に好意的なウェブサイトを多数立ち上げ、悪評をばら撒くサイトを埋もれさせるという検索エンジン最適化(SEO)対策を実施し、科学や学問の進歩のために気前よく寄付する篤志家を演じた。その裏付けとして、伊藤氏のメディアラボなどに惜しみなくカネを出したと考えられるわけだ。

こうした文脈において、エプスタイン氏に最も信頼された人物の一人であった伊藤氏は「失われた信用と正統性の回復」を、寄付の見返りに提供したと言えよう。

伊藤氏自身のビジネスにも投資

また、エプスタイン氏から寄付を受けた際に、伊藤氏自身のビジネスへの投資が抱き合わせになっていた可能性がある。

伊藤氏は、勤務先への累計寄付額である85万ドルよりもはるかに多い120万ドル(約1億8300万円)を、エプスタイン氏から自身のベンチャーに投資してもらっている

この件については、伊藤氏がメディアラボ所長としての立場を利用し、エプスタイン氏に便宜を図り、見返りに自身の事業への投資を得る「利益相反」という解釈も成り立つため、伊藤氏はきちんと説明する必要があるのではないだろうか。