経営層や役員クラスの「脳の単価」

理由2 部下は上司の脳を疲れさせてはいけない

もう一つの本質的な理由は、「聞く側の脳を疲れさせないため」です。

会話においては、話す側よりも聞く側のほうが脳を使うという話を前項でしました。話す側は自分のなかの情報を出すだけですが、聞く側は未知の情報を理解・整理し、判断まで求められるからです。

つまり、報告や相談を受ける上司のほうが、脳のリソースを多く消費しているのです。

特に経営層や役員クラスは、意思決定のための「脳の単価」が非常に高い。部下がダラダラ話すことで時間を浪費するだけでなく、上司の判断力そのものを下げてしまう危険があります。

上司の脳内リソースを奪うことは、会社全体の生産性を下げることにも直結します。つまり、「結論から話す」は上司のためであると同時に、組織全体のパフォーマンスを守る行為でもあるのです。

不寛容な環境が人を育てる

では、どうすれば「結論から簡潔に話す」力が身につくのか? 答えの一つは「圧をかけられる環境に身を置くこと」です。

私自身、若手時代には「話が長い」「で、結論は?」「何を言っているかわからない」と何度も指摘されました。

【図表2】聞く側の思考量が圧倒的に多い
出所=『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

私が新卒で入社したときのサイバーエージェントには、仕事ができて、常に忙しくしている先輩や上司がたくさんいました。彼らに時間をもらうために、こちらも必死でした。

そこで、上司に話しかける前に準備とシミュレーションをする癖がつきました。ちょっとした会話をするときも、事前に考えを構造化し、脳内でシミュレーションして、想定質問も用意しました。こうすれば、上司との会話も必要最低限で終わらせることができます。

職場環境が「ダラダラとした報告」に不寛容であればあるほど、新人の話し方も自然と矯正されていくのです。

しかし現代では、「それはパワハラだ」と受け取られる恐れから、上司が厳しく指摘しにくくなっています。

部下の要領を得ない報告も、上司が「いいよ、いいよ」と辛抱強く話を聞いてもらえる環境で、「結論から簡潔に話す」力を身につけるのは、かなりのメタ認知力と努力を必要とします。

だからこそ、私は部下や後輩に対して「忙しい人の脳のリソースを奪うな」と言い続けています。上司が「俺の時間を無駄にするな」「話をまとめてから来い!」とキレて見せたりすることも、部下の成長の手段としては有効なのかもと思っています。

もしあなたの職場がピリついているなら、それはむしろ成長のチャンスかもしれません。