「まだまだ日本から搾り取れる」という期待

その前提となっているのが、防衛努力の度合いによって同盟国の優先順位を決めるという発想である。自己防衛に多く投資する国ほど武器輸出などで優先される中、防衛費を増やす日本は、その基準に最も当てはまる国の一つだ。

さらに近年では、アメリカ国内への工場投資や雇用創出、対米直接投資など、これまで「経済案件」とされてきた要素までもが、同盟コスト、さらには大統領への忠誠の証として捉えられるようになっている。

それを明確に示すのが、17日にトランプ大統領が発表した、日米投資協定に基づく最初の具体的投資案件の第一弾だ。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、合意文面では「資金判断は日本の裁量」とされているものの、今回発表されたのはアメリカの国家安全保障にとって重要な案件ばかりだ。さらに、投資回収後の利益配分が米国90%・日本10%とされている点も、通常の商業投資とは性格が異なることを示している。

日本は実質的に、アメリカを資本面で支える立場だ。日米同盟はもはや、「一方的に守ってもらう関係」ではない。アメリカから安全保障の提供を受ける代わりに、資金と産業を組み込まれる「取引型同盟」へと姿を変えつつある。

その文脈で、日本側が用意した巨額の対米投資は、「まだ引き出せる余地があるのではないか」という期待を、政権に抱かせている。

アメリカが「物言う日本の首相」を歓迎するワケ

高市氏が中国や台湾問題に関して、これまでの日本の首相としては踏み込んだ安全保障発言を行ったことは、大きな論争を呼んだ。国内では「勇ましすぎる」との批判が出る一方、国際的にも「異例の踏み込み」と受け止められた。

しかし、トランプ政権は、こうした発言を別の角度から捉えているように見える。それは「危うい」ではなく、「使える」と見なされている可能性だ。

日本は中国の正面に位置し、民主主義と市場経済を共有する経済大国だ。本来であれば、対中姿勢を慎重に調整し、言葉を選ぶはずの国だ。ところが高市政権の誕生によって、日本は自ら「対中強硬姿勢」を明確な言葉で表明する国へと変わった。

この変化は、日本が米中対立の中で、より前に出る役割を引き受け始めたと解釈されている。

その結果、アメリカにとっては重要な選択肢が生まれる。自らが直接強い言葉で語ったり、行動に移せば緊張が一気に高まる局面を、日本を介して間接化できる余地だ。

平たく言えば、日本が前に立つことで、アメリカは一歩引いた位置を保てる。つまり日本を「直接衝突を回避するための前線」として位置づけている可能性がある、ということだ。

中国と日本の国旗が描かれた握りこぶし
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