視聴者の脳裏にクエスチョンマークだらけの“爪痕”

日枝氏が当日、会見の場にいないのがそんなに大事なことであるならば、類似案件における責任ある立場の人物の行動を事前に調べ上げ、彼我の相違点をベースに日枝氏不在を責めることもできただろう。

大野和基『世界基準の「質問力」』(祥伝社)
大野和基『世界基準の「質問力」』(祥伝社)

その点、やや旧聞に属するが、2015年に起きた東芝の不正会計問題などは格好の比較材料となったのではないか。

不正会計が問題視されると、田中久雄社長が記者会見に臨み、辞任する意向を示した。だが、米原発メーカー「ウェスチングハウス」を相場の2倍とも言われる額で買収し、大赤字を計上した末、不正会計に手を染めた元社長の西田厚聰相談役はついに現れず。

そして、この事件をきっかけに名門東芝が凋落していったことは、つとに知られる。

たとえば、この一件を入口に、「フジテレビも同じ轍を踏むのか」と追及すれば、テレビの前の人も“日枝氏不在”は責任逃れ=罪ではないか、と実感できたのではなかろうか。

あるいは、愚直に日枝氏へのフジテレビの報酬支給額や優遇措置などを調べ、そうした点からフジテレビがまさに“日枝天皇”と呼ばれるような扱いをしていたことを浮き彫りにし、責任の所在を追及する。そういうやり方もあったはずだ。

だが、結果はすでに説明した通りである。視聴者の脳裏にクエスチョンマークだらけの“爪痕”を残しただけだった。

質問の“プロ”でも犯しがちなミス

前項での質問という名の意見表明も、この項で説明した数珠つなぎ質問も、実は質問の“プロ”と思われている人たちでも犯しがちなミスである。それは望月記者以外にも、ダラダラと質問した人が少なからずいたことからも、おわかりいただけるであろう。

プロでもできない人がいる。だからこそ、質問の優先順位、そして論理展開をきちんとシミュレーションしておけば、交渉ごとでも優位に立てることは間違いないのである。

CONCLUSION
事前に必ず質問の優先順位と
論理展開をシミュレーションすべき!
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