高松宮「公民権停止を食らったようなもんだ」
昭和51(1976)年、『文藝春秋』誌上で4名の皇族方による新春座談会が行われた(昭和51年2月号「皇族団欒」)。受刑者の選挙権をめぐるニュースを目にして、筆者が真っ先に思い浮かべたのが、その際の寛仁親王と高松宮宣仁親王のやり取りだ。
寛仁親王「われわれには基本的人権ってのはあんまりないんじゃない?」
高松宮「選挙違反やって公民権停止受けてる人に僕はそういってやったのよ、『あなたと同じようなもんだ』(笑)。その人、非常に喜んでね(笑)」
寛仁親王「だって選挙権もないんだしさ」
周知のように、皇室の方々には選挙権が認められていない。このことについて、まるで受刑者のような扱いだと自虐的に触れられたのだ。もしも受刑者に選挙権が認められたならば、皇室はある意味では、受刑者よりも低い立場に置かれてしまうことになるといってもよい。
天皇は「象徴」というお立場ゆえに、不偏不党、公平無私であられねばならない。天皇もしくは摂政になりうるお立場ゆえに、皇族もまた同様であられねばならない――。
皇室の選挙権は、このような論理の下に否定されてきた。一見、説得力があるように思えるけれども、それならば皇室と似たような立場にある世界の王室はどうなっているのだろうか。
参政権を「持ちつつも行使しない」欧州王室
結論からいえば、参政権を認められている王室も多い。
憲法学者のリュック・ホイシュリング氏(ルクセンブルク大学教授)によれば、西欧においても「民主主義の名の下に、君主や王統構成員を選挙人団に包摂してゆく傾向が存在している」そうだ。
多くの国において、君主は選挙人になるためのさまざまな基準を満たしており、また君主を選挙人から排除するいかなる規定も存在しない。それゆえに「選挙権を有していると推論せねばならない」というのである。
これはけっして机上の空論ではない。参政権があるともないとも言わない王室もある一方で、以下のように有権者であることを国民に明示している王室もあるのだ。
「国王には投票権がありますが、中立性を保つために行使しません」(オランダ王室公式webサイト)
「国王は納税をし、選挙権を持ちます。しかし、古くからの慣習により、これまで一度も投票したことはありません」(スウェーデン王室公式webサイト)
投票しないという結果は同じであっても、参政権を持っているけれども自己の裁量によって行使していない場合と、日本皇室のように参政権を否定されている場合とでは、受け手の印象はずいぶん異なるのではないか。

