大前経営塾の学習で役立ったこととして川畑取締役は事象の本質的な問題を探る思考の訓練と、「引き出し」の増加をあげる。前者は表面的な出来事に振り回されずに抜本的な問題解決へ取り組むことを可能にし、後者は「部下に伝えるものが増えた」(川畑取締役)。

現行の大前経営塾のなかで、川畑取締役はネット上の議論における発言数がもっとも多い。ただし、それは意図した結果ではないと語る。

「皆さんの書き込みを見ていると、聞きたいことがたくさん出てきます。そこで自分の見方や考え方を提示したうえで質問すると、いろいろなやり取りが生まれます。また、経営塾のなかで私は上のほうの年齢です。その分、部下との接し方や組織の動かし方といったことはたくさん経験しているので、若い方から何か困っているなと感じる書き込みがあると、ヒントになればという思いで『こんなやり方もあります』と書き込んでいます」

現在、川畑取締役が担当する電話番号案内事業は静岡から沖縄まで21のセンターを持ち、1200人が従事する事業であるが、約20年前に有料化したときと比べ、ネットやスマホの普及もあってコール数が9割近く減少している。この厳しい局面から未来をどう切り開いていくか、大前経営塾で学んだことを活かしていきたいという。

孫正義の立場だったらどうするか

バンドー化学は自動車用伝動ベルトやコンベヤベルト、精密機能部品などの製造、販売を行っている一部上場企業である。連結売上高は857億円、従業員数は約3600人。

今年、社長に就任した吉井満隆氏は、同社のヨーロッパ子会社の社長としてドイツに赴任していた時期に大前経営塾を受講した。

「当社には経営者を養成するためのさまざまなプログラムが用意されていますが、残念ながら海外にいると受講することができません。それらに代わるものとして人事部が探してきたのが大前経営塾でした。一方通行ではないインタラクティブな教育が時差に関係なくオンデマンドで受けられるということで、私が当社で第1号の塾生になりました」