日本が「線引き」を明確に示す方法

では、「遺憾」を使わずに尖閣周辺での中国海警船の行動に抗議するには、具体的にどうするべきなのか。筆者は以下のように考えている。

(1)事実ベースで明確に伝える
・侵入日時、船名、航跡、接続水域・領海への滞在時間などの具体的なデータを添えて公表する。
・国際法上の違反行為として明示する。
例:「○月○日、海警○○号は尖閣領海に○時間侵入。国際法上認められない行為であり、即時撤退を求める」

(2)段階的対応を明示する
・侵入の頻度や連続日数に応じて、外交的警告・監視・物理的警告(進路妨害)などの対応段階を明示する。
・「ここを超えれば必ず対応する」というラインを示すことで、慣れや軽視を防ぐ。

(3)国際社会への発信
・米国、ASEAN、国連関係機関などに状況を報告し、国際ルール違反として認識させる。
・日本国内向けのパフォーマンスではなく、国際的正当性と透明性を重視。

(4)認知戦を意識した抗議
・中国が常態化・日常化戦術で心理的圧力をかける中、冷静かつ論理的に抗議内容を伝える。
・過剰な強硬表現や感情的表現は避け、事実の積み重ねで信頼性を高める。

重要なのは強い言葉ではない。日本が握る行動基準を誰にでもわかる形で示すことだ。

主権国家としての意思決定が試されている

レーダー照射に関しては毅然とした対応をとったにもかかわらず、尖閣諸島周辺の領海侵入については定型句で済ませているのは、結局のところ日本政府内でも“慣れ”が生じているからにほかならない。

中国は、軍事衝突という高コストな手段を避け、海警船、法律、言葉を使いながら、少しずつ既成事実を積み上げてきた。一方、日本は定型句を繰り返し続け、結果的に中国の行動を阻止できなくなった。これは外交の敗北である。

国際政治において、主権は宣言されているだけでは守れない。行使され、意思として可視化され、相手に「ここから先は損をする」と理解させて初めて維持される。何が主権侵害であり、どこからが許容不能なのか、言葉と行動を一致させなければならない。

尖閣は、日本の安全保障の「最前線」であると同時に、この国が主権国家として意思決定できるかどうかを試す試金石でもある。

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