国民の声は「誤情報」扱いか

こうした「国民不利」な政策が実施されるのも、企業には政治献金やパーティ券購入など、政治家を日常的に直接支援できる環境があるからだろう。結果、時間をとって会議室や会食を通じて直接、政治家に伝えられる経済界の要望は、“悲痛な叫び”として受け止められる。外国人政策を担当する小野田紀美大臣も、自身のSNSで「我が国らしさを守り続ける事は絶対に譲れない一線」と強調する一方で、「地方自治体の首長も、様々な職種の業界も、農林水産業も、とにかく外国人労働者を入れてくれという要望は各所からひっきりなしにあります」と明かすほどだ。

しかし、政治家に直接要望を伝えることが難しい国民は、数年に1度の選挙しか、政治に関与できない。せいぜいSNSで書き込んで、ガス抜きする程度すら、時には「誤情報」扱いされてしまう始末だ。自分の職場が特定技能の対象分野になって賃上げが抑制される運命の日本人労働者の悲痛な叫びは、残念ながら政治家に届く動線は用意されていない。

高市首相に問われていること

その結果、政治に反映されるのは、労働者の賃金抑制を利益に転換できる経済界の声に偏り、政治家はそれを正当化するのが仕事になる。

本来、政府がすべき対応は、外国人労働者受け入れという賃金ダンピング的な政策の旗を振るのではなく、下請法の適応を徹底し、協力会社の賃上げのための価格転嫁を大企業に認めさせ、賃金のミスマッチの解消を図ることだろう。

そして、外国人労働者受け入れを検討するのは、少なくとも、現在、史上最低水準の実質賃金や労働分配率が大きく改善した後に考えるべきことであり、順番が逆転している。

衆院選圧勝で強固な権力基盤を手にした高市首相は、選挙後もこうした状況を放置するのか、それとも「ゼロベース」発言が本心だったことを証明するための基盤として使うのか、果たして――。

2026年1月19日、記者会見を開き、衆議院を解散し総選挙を実施する意向を発表した高市総理
高市早苗首相(写真=内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons
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