自民も中道も「総量規制」に否定的
そもそも、「総量規制」は選挙前から自民、中道の2大政党が否定的だった。つまり、国民にとっては極めて重大な政策に対して、賛否が問われる機会すら十分でなく、「移民の国に変わっていく」政策の政党しか、選択の余地が元からなかった。仮に中道が勝っていたとしても、形式上は、国民が事実上の移民政策推進を信任したことになってしまう。これ以上の移民抑制が民意だとすると、票を集めやすい主要政党がその民意を黙殺すれば「国民主権」は葬られてしまう状況とも言える。
この事実上の移民政策推進の大きな目的が、人手不足とされる分野の労働力確保だ。だが果たして合理性はあるのか。
「外国人がいないと社会インフラが崩壊する」「募集賃金を上げても、とにかく人が来ない」。これはよく聞かれる言説だ。確かに年齢別の人口動態を見るともっともらしく聞こえ、失業率は2.6%と完全雇用に近い状態だ。25年の「人手不足倒産」も前年から25%増の過去最高の427件となっている(帝国データバンク調べ)。
人手不足なら給料は上がるはずなのに…
しかし、経済の教科書に照らすなら、人手が足りなければ、必ず賃上げが起こるはずだ。まずは人手不足業種の賃金が大きく上がり、他業種からの雇用流動が起きて労働市場全体の実質賃金の上昇がもたらされるのが、労働市場の本来のメカニズムだ。
しかし、実際の政策では、賃上げが限定的な、事実上の単純労働の労働力を外国人で補う政策となっている。しかも、マクロ経済に目を転じると、この「人手不足」とは真逆の実態が見える。有効求人倍率は2019年に1.6のピークを付けてから、直近では1.22と落ち着いており、実質賃金はコロナ禍に見舞われた2020年比からさらに低下している。
「人手不足」倒産といっても、価格に転嫁して賃金を上げられないなら、厳しい言い方をすると淘汰の現象を言い換えただけである。一方で、24年の新設法人数は年間15万件と過去最多であり、新陳代謝の片側にだけ注目することに意味はない。
「賃上げしても、人間自体がいない」とも言われるが、そもそも、引っ越しがあってもそこで働いていいという賃金水準の均衡点が、その会社で働く際の募集賃金の妥当な相場となる。地方であっても、高給で知られるTSMCの熊本工場には全国から多くの日本人労働者が移住している。少子化が進行し、希少性がある新卒の賃金も急激に上がっている。
実際、人手不足とされながら外国人労働者の参入が難しい業界は賃上げが著しい。例えばタクシー運転手の賃金は、2014~23年で、年収309万円→418万円(全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)となり35%上がっている。都心部では最近では600万円を超えるケースも珍しくなく、異業種からの転職を増やしている。

