特定技能追加の「本当の目的」

タクシー業種のような賃上げを促すことが、政治の本来の役割のはずだが、現実の政策は残念ながら真逆だ。実はこのタクシー業界も24年から「特定技能」の対象分野に追加され、今後は外国人労働者が増える見込みであり、せっかくの賃上げの波も政府の政策の結果、そろそろストップしそうな情勢だ。そもそも、タクシーが賃金を上げてもさらに足りない状況なら、外国人を入れる前に各国で導入実績のあるライドシェアを検討すべきだろう。特定技能の追加の本当の目的は、移動手段の不足解消ではなく、タクシー業者の利益の確保と見られても仕方ないのではないか。

こうした政府の姿勢を裏打ちするように、政府自らが賃金をコントロールできる分野ですら、賃上げは限定的だ。例えば、通常、3年に1度改定される介護報酬は、26年度に2.03%アップの臨時改定が決まった。しかし、これは25年の物価上昇率の3.7%より低い上げ幅だ。一方、一般会計税収(26年度)は物価上昇の追い風を受けて当初予算比で7.6%増と過去最高を更新したことから考えれば、その渋チン具合は事実上、政府自ら賃金水準を「切り下げている」に等しい。そして、介護分野でも政府は「人が来ないから」と、大々的に外国人に門戸を開いているのである。

車椅子に乗った高齢者と介護職員
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

大企業の営業利益率は30年で倍増

例えば、建設業種は極度の人手不足であり、実際、賃金上昇は著しく、こうした分野の外国人労働者の受け入れはまだ理にかなっている。しかし、賃上げが限定的な分野でも外国人受け入れの門戸は政策的にどんどん開いている。本来、人が集まるかは賃金の“上げ幅”次第であり、それが無理なら事業として成り立っていないだけの話である。必要不可欠なライフラインを支える事業であれば、優先的に補助をするのが真っ当な分配政策だろう。

また、直接、現場で外国人を雇用する企業の多くは利益率が低い30人以下の小規模事業者であり、全体の63%を占める。「人が足りない」という悲痛な声に嘘はないだろうが、それは、高い賃金を出せないこととイコールでもある。そして彼らから成果物を仕入れる、取引の重層構造に連なる会社の利益率は年々拡大しており、法人企業統計ベースでの営業利益率は30年で倍増している。経済全体では、賃上げの原資に大きな余裕があるのはデータが示す間違いのない事実だ。