国土交通省が調べた「遅延の原因」

遅延が常態化しているというのに、鉄道事業者はなぜ対処しないのか。実態を把握していないのか。監督官庁の国土交通省は何をしているのか。

実は、国土交通省も遅延の実態を掴もうとした時期がある。2019(平成31)年に公開された「東京圏の鉄道路線の遅延『見える化』(平成29年度)」では、「遅延証明書の発行状況」「遅延の発生原因」「鉄道事業者の遅延対策の取組」を、数値・地図・グラフ等により、わかりやすく「見える化」した。

この文書の中の「東京圏(対象路線45路線の路線別)における1カ月(平日20日間)当たりの遅延証明書発行日数状況」を基に、遅延が発生した路線を路線図で色分けし、遅延の原因を円グラフにした。また、鉄道事業者の各社の対策も紹介されている。

この平成30年度版によると、30分以上の大規模な遅延の原因1位は「自殺」(52.4%)、10分未満の小規模な遅延の原因1位は「乗降時間超過」(48.3%)だった。

この文書は2016(平成28)年に国土交通大臣の諮問機関、交通政策審議会が「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」(答申198号)で、「遅延の現状と改善の状況を分かりやすく『見える化』することが特に重要」との指摘を受けて調査し、公開された。

「見える化」はわずか2年で終了

さらに、「遅延の発生状況について毎年公表し、経年で確認できるようにする」とされたけれども、2020(令和2)年に公開された「東京圏の鉄道路線の遅延『見える化』(平成30年度)」を最後に公開されていない。たった2年で終わり。「毎年公表し、経年で確認」ができていない。

この件について国土交通省鉄道局総務課鉄道サービス政策室に問い合わせたところ、平成31年度以降の調査は実施していないとのことだった。その理由について「コロナ禍で鉄道利用客が減り、遅延が減ったからか」と訪ねると「そうだ」という。加えて「鉄道事業者ごとに統計の取り方が異なり、連携しにくい」とのことだった。

国土交通省が遅延対策を見限ったわけではない。同省が2025(令和7)年の「第217回 通常国会」に提出した「令和7年版交通政策白書」のなかで、「遅延対策について、鉄道事業者に対して更なる改善の取組を求めていくため、遅延の現状と改善の状況を分かりやすく『見える化』する等の取組を進めている(p50)」とある。