利用者に「改善の状況」が届いていない
このうち、「遅延の現状」は、鉄道事業者各社が「遅延証明書の発行状況」を公開したことで達成したと言えそうだ。かつて駅で配布していた「遅延証明書」は、いまやインターネットで入手できる。JR東日本だけではなく、たいていの鉄道事業者は過去1カ月分に対応している。しかし、履歴が1カ月しかないため年間比較まではできない。
「改善の状況」は取り組みを進めていると記述しているが、その成果が発表されていない。鉄道事業者が発行する「中期経営計画」や「移動等円滑化取組計画書」などをひとつひとつ当たる必要がある。これでは「取り組んだ」とはいえない。
2015年に公開された国土交通省の「遅延対策ワーキング・グループ 報告資料」によると、「鉄道事業者は、5分以上の遅れを遅延として遅延証明書を発行、30分以上を輸送障害として国に報告しているが、両者は原因・態様が異なっている」とあり、鉄道事業者を一様に比較した資料が作りにくいのかもしれない。
しかし、鉄道の混雑対策や踏切対策では一様の基準を作り、鉄道事業者などに対策と報告を求めている。遅延対策についても、国土交通省が指導的立場で報告仕様を統一し、国として対策と支援ができる環境を作っていただきたい。
「30分以内の遅延」は利用者が起こしている
先に挙げた「遅延対策ワーキング・グループ 報告資料」によると、利用者から見た遅延の分類は3種類だ。
「いつものことで慣れている遅延」「しばしば発生するちょっとした遅延」「稀に発生する長時間遅延」である。
「いつものことで慣れている遅延」は0~10分で、「ほぼ毎日発生するため、予め織り込んで行動しており、不利益は少ない。ただし、年間を通じて大きなロスタイム」となる。原因は混雑で、対策としては予防、つまり利用者側の予測行動だ。4月は新入社員、進学などで不慣れな乗客が多く遅延しがち。寒くなれば着ぶくれラッシュで混雑する。
「しばしば発生するちょっとした遅延」は10~30分だ。同一路線で週に1回か2回の発生が観測できる。原因は急病人やドア挟み事故などだ。対策としては早期回復と予防としている。これも利用者側に原因があり、利用者が体調を整え、荷物などを管理するなど予防を心掛ける必要がある。

