まずは「ネガティブな感情に気づくこと」

授業の中では、先生方がまずちょっとした寸劇(ソーシャル・スキル・トレーニングでは、モデリングと呼ばれます)を見せてくれました。

渡辺弥生『怒っている子どもはほんとうは悲しい 「感情リテラシー」をはぐくむ』(光文社新書)
渡辺弥生『怒っている子どもはほんとうは悲しい 「感情リテラシー」をはぐくむ』(光文社新書)

たとえば、先ほども例に出したような、突然知り合いから「あ、靴下に穴があいてるよ!」と大きな声で指摘される――そんな場面の寸劇です。

このとき、自分だったらどんなリアクションをとるのか。そして、そのとき、自分はどんな気持ちになっていたのか。

「恥ずかしい」「失敗した感じ」「自己嫌悪」「ショック」など、ふいに湧き上がるネガティ

ブな感情に、自分で気づくためのモデルをいくつか示していきます。

ポイントは、「なぜうまく反応できなかったのか?」という問いに、感情面からアプローチすることです。

つまり、「反応できなかった自分」を責めるのではなく、「それほどショックだった」「恥ずかしかった」という気持ちに、まずは気づき、受けとめることが大切なのです。

そのうえで、「じゃあ、そんな気持ちになったら、どうしたらいいだろう?」と話し合います。生徒自身も役割を演じてみたり、思いついた行動を試してみたりします。

大切なのは、「正解」を探すことではありません。恥ずかしいと思う気持ちは自然なことで、それ自体は決して悪いことではない、という気づきが出発点です。

恥ずかしい感情を表現する「予行練習」

ただ、その気持ちを消すことはありません。そもそも消せないものです。消そうという焦りに押し流されず、それを表現してみましょう。「うわ、はずかし〜!」と。それでいいのです。練習しているうちに、ちょっと余裕が出てきて、笑いに変えて受けとめてみる。受け止めれば、次は、対策です。「誰かに借りる」「買いに行く」「履き替えに帰る」といった現実的な対処をいろいろ考えることができます。

こうした体験をあらかじめしておくことには、大きな意味があります。

ふいにやってくるからこそ動揺してしまうけれど、「あ、これ経験した場面だ」と思えるだけで、「たいしたことない」のカテゴリーに入れられるようになるからです。

そんな“心の予行練習”を、授業の中で積んでいくのです。

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