日本のスタートアップで「新たな挑戦」

しばらくワインづくりに熱中しながら、いくつかオファーを受けていた業務委託のプロジェクトに着手しはじめた。フルタイムの仕事は探さない。自分のペースで働きながら、好きなワインに没頭する暮らしが10カ月ほどつづいた。

新たな挑戦は2025年3月に始動した。日本のスタートアップSANUの執行役員(CCXO兼ソフトウェアエンジニア)に就任したのだ。

SANUの事業は、日本各地で自然の中に「もう1つの家」を建築し、サブスクや共同所有から気軽に自然へ通える暮らしを提供するというもの。山中湖や軽井沢といった首都圏からのアクセスがよい場所を中心に、北はニセコ、南は奄美大島や石垣島まで「もう1つの家」の建築を進めている。井上さんの知識と経験を活かせる「建築+IT」の分野だ。

きっかけはワイナリーの空いている土地に、宿泊施設を建設したいと考えたこと。日本のリゾート事業者と連絡をとるうちに、SANUの福島弦社長と出会って意気投合。初めはパートタイムの業務委託エンジニアとして、同社の事業に参加した。

ものづくりで「究極の夢」を実現する

執行役員に就任する際、アメリカに住みつづけ、SANUの仕事に支障がない範囲で、ワイナリー事業や他の仕事もできることを条件とし、快く受け入れてもらえたという。

「建築とテクノロジーの融合、そしてフルスタックエンジニアとしての全方位開発という前職で果たせなかった夢への再チャレンジです。SANUは全国各地に35拠点、231室を構えて現在も拡大中だからビジネスのスケールも大きくなる。ただ最近はおカネや地位や名誉より、世界がこうなったら楽しいな、こういう暮らしって豊かだなと思えることに価値を感じるようになりました。自分がつくった世界中の別荘を巡りながら、自分のワインに手料理を合わせ、大自然の中でサウナや露天風呂を楽しむといったイメージがSANUの事業に描けました」

井上さんは自分の役割を「フルスタックエンジニア(物理)」と定めている。ソフトウェア、ハードウェアの全方向でものづくりができるエンジニア。地球上のありとあらゆるものを自分でつくれるようになる――究極の夢を実現するための一歩になるという期待がSANUにはあるという。レイオフや働かない期間も、次なる飛躍への大きな糧となったようだ。

温泉制御システム
撮影=プレジデントオンライン編集部
井上さんが設計・開発した温泉制御システム。従来型の温浴設備と比べて、1000万円以上のコスト削減に成功した
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