家は徹底して和風に

セツの養父母の同居は、ハーンにとって好都合だった。とくにトミが家事をはじめ、家中のほとんどを取り仕切ってくれたので、セツはハーンの身の回りの世話と、ここから二人三脚で進めていくことになった執筆の手伝いに専念できたからである。

また、暮らしは松江にいるときよりも若干、西洋風に振れたようだ。ハーンのひ孫の小泉凡氏は『セツと八雲』(朝日新書)に次のように書いている。

「やがて西洋料理の調理人を雇い入れ、パンやステーキなどの食事をつくってもらいました。その方が経費が抑えられたようです」「この時期のスケジュールとしては、朝6時ごろにセツに起こされます。神棚に拝礼してから、パンに卵、コーヒーの軽い朝食を取ります。セツが持ち物を渡したり、ポケットに気をつけたりと世話をして洋服に着替えます。家の人々に見送られながら、人力車に乗って出勤します」