少年マンガのような民俗学の本
――日本の地方の民間信仰は、過疎高齢化などの影響で廃れつつあります。一方で、『中国TikTok民俗学』で取り上げられた中国の民間信仰には、生き生きとした活気を感じました。
日本を舞台に書かれる民俗学のルポルタージュは、消えゆく文化を記録するという目的で書かれたものが多い気がします。そのためか、どことなく文学的な切なさが漂っている作品が多いですよね。
一方、『中国TikTok民俗学』の場合は、読者から「少年マンガみたい」という感想がチラホラ寄せられている。鋭い指摘だと思います。確かに本書には少年マンガチックな脳天気さが濃厚に漂っていますから。
しかし、それもそのはずです。私が中国各地で見聞きした民間信仰はいずれも現役で活躍する現在進行形の文化。衰退の予兆など微塵も感じさせません。そのテンションの高さを文章で忠実に再現しようとした結果、世にも珍しい少年マンガみたいな民俗学の本になってしまいました。
中国で人気を集める“日本の神さま”
――現役で活躍する中国の民間信仰にはたとえばどのようなものがあるのでしょうか?
本書で取り上げた“大黒天の逆輸入”なんかいい例だと思います。大黒天というのは、もともとはインドのマハーカーラという恐ろしい神でした。それが密教の伝播とともに、チベット、中国を経て、日本に伝わります。その後、日本神話に登場する大国主命と習合し、日本特有のふくよかなおじさんの姿になりました。
私が暮らす福建省厦門では、毎年、国内外から1000を超える仏具屋が一堂に会する大規模な仏具展覧会が開かれます。私はそのイベントが大好きで、毎年通っているのですが、数年前から奇妙な光景が観測されています。おびただしい数の日本の大黒天像が展示販売されているんです。
「なぜ、和式大黒天が中国に⁉」
不思議に感じて調べはじめると、中国における和式大黒天ブームは“密教の逆輸入”とも呼べる現象であることがわかりました。


