同時多発する“大黒天の逆輸入”

日本の密教は、遣唐使として空海が長安に留学して持ち帰った宗教です。その後、日本では高野山を中心に密教が定着しました。一方、中国の密教は衰退の歴史を辿ります。そうした背景のもと、現代中国に密教を復元するべく、多くの中国人が高野山に留学し、密教を逆輸入している状況があります。その過程で、しばしば和式大黒天も一緒に逆輸入されているようなのです。

その代表的な人物が、香港で大きな影響力を持つ居明きょめいという占い師です。日本でいうところのDr.コパさんのような人です。高野山に留学した彼は、和式大黒天の存在を知り、香港に戻ってから「和式大黒天像を拝むとお金が儲かるぞ」と盛んに宣伝しはじめました。

李居明
李居明(写真=數碼電台DBC/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

ただし、李居明による逆輸入は“大黒天の逆輸入”の一例に過ぎません。その他の宗教家が高野山から逆輸入しているケースもあります。また、宗教家ではない一般の中国人にとっても和式大黒天のふくよかな見た目は琴線に触れるものらしく、日本旅行のついでに大黒天像を見つけては「おめでたそう」「御利益がありそう」という感じで購入し、自宅でおのおの祀っているケースも少なくないようです。