タイトルに引かれて読むうちに「これこそが鉄道だ」という思いを深くした。

関西を代表する大手私鉄の小さな支線が舞台である。8つの駅を乗り降りする乗客たちの物語が、ほんの少しずつ重なり合いながら連鎖していく。おばあちゃんと孫娘、わけありのカップル、女子高生たち……。鉄道は人々が「袖すり合わす」交差点の役目を果たしている。

地方私鉄はどこも乗客減少が深刻だ。しかし、定期券の割引率を見直し通学客を増やすなど、工夫のしようはまだまだある。当社の湊線もなるべく多くの人に利用してもらい、本書が描く阪急今津線のように、老若男女が往来する交流の場にしていければと思っている。