本来なら冬眠の季節でも、各地で起きた熊被害をメディアは報じている。東北大学特任教授で人事・経営コンサルタントの増沢隆太さんは「クマによる被害が報道されるたびに意見の対立やクレームが生まれている。なぜこんなにも人々の関心を集め、議論が熱くなってしまうのか、そこには駆除反対派とそれを否定したい人の意識の差にある」という――。
岩の上のヒグマ
写真=iStock.com/Thomas Faull
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「クマは危ないものじゃない」で炎上状態に

クマとヒトとの戦争ともいわれるように拡大したクマ問題。被害者も発生する深刻な災害となる中、対応についてはさまざまな意見が飛び交います。政府の対策も始まりましたが、今度はその対策への意見もさまざまに発信されるという、次から次へと話題も関心も尽きない状況です。なぜクマ問題はこれほど日本人をアツくさせるのでしょうか。

意見の対立で印象的だったのが、俳優で狩猟免許を持つ東出昌大さんが『SPA!』の連載「誰が為にか書く~北関東の山の上から~」で寄せた「クマはそんな危ないもんじゃない」と題したエッセイ(※現在は削除されている)です。11月18日にYahoo!ニュースに掲載されたことで一気に拡散され、軽い炎上状態になりました。

内容はそれほど過激な自然や熊保護を訴えたものではなく、今のメディア報道のありかたへの批判的発言の一部といったものなのですが、昨今のクマ被害もあり、ニュースタイトルだけで見事にその発言は燃え上りました。それはやはり今年のクマ問題が国民的関心事であり、深刻な事態だと受け止める人が多いからでしょう。

飛び交う駆除「賛成」と「反対」の意見

環境省によれば2025年度上半期(4~9月)のツキノワグマの出没件数は、統計のある09年度以降最多の2万792件で、初めて2万件を突破したとのこと。犠牲者も出るなど、被害は深刻です。

出所=環境省『令和7年度のクマによる死亡事故件数及び緊急銃猟の実施状況について

クマ被害が深刻な中でも必ず出てくるのがクマや自然の保護の声です。クマから人間を守るべきという意見と、反対にクマに罪は無く、駆除などせず人間と共生すべきという真っ向からの意見対立となります。そんな激しい議論の片方に賛同するような意見が飛び交う中で、東出さんのエッセイが批判を呼び、一気に炎上してしまうのは容易に想像がつきます。

クマは即刻駆除すべしという駆除賛成派の意見には、過去にないほどの被害を生んでいることや、仙台市、秋田市、盛岡市など県庁所在地にまでクマが姿を現すようになったことで、これまでより支持は広がっていると思います。ネットニュースへのコメントやX(エックス)への書き込みでも、積極的にクマを駆除すべき、警察や自衛隊などの戦力を投入すべきといった積極的対策を支持する意見は多く目に入ります。

一方の駆除反対派は、自然に暮らしていたクマは、言ってみれば人間がその棲家を侵食した結果、市街地にまで現れたのであり、悪いのは人間、クマ問題の原因を作ったのは人間だという立場から、駆除に反対する人が多いと思われます。