「100年企業」は、なぜ長きにわたり事業を継続できているのか。創業1922年のオタフクソース(広島市西区)は、「お好みソース」で国内トップシェアを誇り、最近では海外での業績も好調だ。同社の8代目社長の佐々木孝富さんに、長寿企業でありながら業界トップクラスを維持し続けてこられた要因を、ライターの鬼頭勇大さんが聞いた――。(第2回)
オタフクソース8代目社長の佐々木孝富さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
オタフクソース8代目社長の佐々木孝富さん

目先の業績や数字よりも大事にしてきたこと

ソース業界でトップクラスのシェアを誇るオタフクソース。「お好みソース」が国内で圧倒的な人気を誇る一方、海外に3工場を設立するなど世界進出も進めている。グループの連結売上高は324億9000万円(25年9月期)と過去最高となっている。

同社の経営哲学について、佐々木孝富社長は、「一見すると、非効率かもしれない。でも、それが最終的に生きてくることがあるはず」と語る。

1922年に、広島市で酒・醤油類の卸小売業「佐々木商店」として創業したオタフクソースは、佐々木一族が経営してきた「ファミリー企業」だ。現在の社長・孝富氏は、創業者から見て孫の代に当たる第三世代に該当し、会長を務める前社長の直義氏は実の兄である。

そんな同社で脈々と受け継がれてきたのが、目先の業績や数字ではなく、現場・現物・現実を大事にする「三現主義」、さらには社員を大事にする姿勢だ。時にはあえて非効率な活動をも行いながら、顧客や社員と向き合う。同社の経営哲学について、孝富社長に話を聞いた。

「創業家が仲良くすることは義務」

オタフクソースを含むOtafuku(オタフク)グループは、創業家の佐々木8家が代々経営のかじ取りをしてきた非上場の企業グループだ。現在の孝富氏はオタフクソースの8代目社長に該当する。

ファミリー企業といえば、親子同士の権力争いなど“お家騒動”がつきもののイメージもあるが、Otafukuグループは一線を画する。「お客さまや社員のことを考えると、われわれ創業家にとって仲良くすることは『義務』」と孝富社長は語る。

本社前にある、創業者・佐々木清一氏の言葉を刻んだ碑。戦争によって大きな被害を受けた広島発の企業としての思いが書かれている。
撮影=プレジデントオンライン編集部
本社前にある、創業者・佐々木清一氏の言葉を刻んだ碑。戦争によって大きな被害を受けた広島発の企業としての思いが書かれている。

創業8家のメンバーは、週末にゴルフへ出かけることも珍しくないというほど距離が近いものの、6代目の茂喜社長時代に、後継者問題などを含めて創業家に対するルールとなる「家族憲章」を数年がかりで作成している。給料や退職金、役割や入社に関する取り決めなども盛り込んだ。