※本稿は、堀田秀吾『最先端研究で分かった頭のいい人がやっている 言語化の習慣』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
「失敗」をどう受け止めるか
失敗したとき、真っ先に自分を責めてしまうなんていうクセはありませんか。
もちろん、ふりかえって改善点を見つけることは大切ですが、「責める」ことと「ふりかえる」ことは別です。自分を強く責め続けると、挑戦する意欲が削られ、次の一歩を踏み出しづらくなります。
スタンフォード大学のドゥエックは、人の能力や学びに対する考え方を「固定マインドセット(fixed mindset)」と「成長マインドセット(growth mindset)」に分けました。
固定マインドセットの人は「能力は生まれつき決まっていて変わらない」と考えるため、失敗を「自分の限界の証拠」と捉えがちです。一方、成長マインドセットの人は、「能力は努力や工夫で伸ばせる」と考えるため、失敗を「成長のための材料」として受け止めます。
この違いは、自己信頼の土台を大きく左右します。固定マインドセットの状態では、「失敗=自分の価値を下げる出来事」となり、自己信頼は簡単に揺らぎます。しかし、成長マインドセットの状態では、失敗は学習過程の自然な一部であり、「これも通過点」と冷静に受け止められます。その結果、自分に対する信頼感を保ちながら前進できるのです。
失敗を恐れない人がやっていること
「失敗しても大丈夫」と思えるようになるポイントは3つ。
①事実と評価を分ける
「プレゼンでミスをした」という事実と、「自分はダメな人間だ」という評価を切り離す練習をします。事実は変えられませんが、評価することば(解釈)は自分で選べます。「ミスをした」=「改善点が見つかった」と解釈し直すことで、自分を不必要に傷つけずに済みます。
②失敗の中の学びをことばにする
ドゥエックは、失敗を学びに変えるためには「プロセスへの注目」が欠かせないと指摘しています。「何がうまくいかなかったのか」「次はどう工夫するのか」を具体的に言語化すると、失敗が未来への資源に変わります。
③小さな成功体験(スモールステップ)を積み重ねる
自己信頼は「できた」という感覚の積み重ねから生まれます。完璧を目指すのではなく、達成可能な小さな目標をことばで設定し、成功への道筋を輪郭化し、一歩ずつクリアしていくことが大切です。こうした経験は、「失敗しても立て直せる」という確信につながります。
自分を信頼することは、自分を甘やかすこととは違います。むしろ、自分を信じるからこそ、改善の努力を続けられるのです。「失敗しても大丈夫」と思えるようになると、新しい挑戦に対しても恐れが減り、行動の幅が広がります。

