行動を後押しする3つのことば

前節では、脳のやる気のエンジンを動かす仕組みの話をしました。その中で、「ことば」を使ってエンジンをかけることが有用だと言いました。ここでは、実際にどのようなことばを使えばいいかを見ていきます。

脳科学では、言語が行動制御ネットワークと密接に結びついていることがわかっています。つまり、セルフトークは、ただの気分転換ではなく、「前頭前皮質や基底核きていかくといった意思決定・行動開始を担う脳領域を活性化する指令の信号」になります。

ここでは、実際に行動を促す3つの「ことばのスイッチ」を紹介します。

①「○○するよ」

私たちは「やろう」と思っても、その通りに行動できないことがよくあります。「英会話を始めよう」「運動をしよう」「健康診断に行こう」など、意思はあっても、日々の忙しさや気分次第で先延ばしになってしまう……。

その「意図と行動のギャップ」を埋める工夫として、「いつ・どこで・どうやってやるかを事前に決める(実行意図)」と「『〜するよ』と約束すること(コミットメント)」の効果を実験で検証したのが、マサチューセッツ大学アマースト校のアイゼンらの研究です。

「やるよ」という宣言が効果的

結果は興味深いものでした。より具体的な実行意図(日付や場所まで決める)でも、大まかな実行意図(週単位で計画する)でも、同じように行動の実行率を高めました。また、実行意図をまったくしていなくても、「やるよ」と明確にコミットメントさせるだけで、同程度の実行率を高める効果がありました。

アクションコンセプト
写真=iStock.com/XtockImages
※写真はイメージです

実行意図とコミットメントのどちらか一方でもすれば実行率は大きく上がり、両方ともやっても大幅増はみられなかったということです。

ここから、「ことばにして自分や他人に約束する」という行為そのものが、行動を後押しするということがわかります。

たとえば「来週中に走る時間をつくるよ」「土曜の朝9時に近所の公園で3キロ走るよ」など、行動計画をあらかじめ言語化してみましょう。さらに友人に伝えたり、SNSで宣言したりしてコミットメントを強化すれば、自分で決めたことをやり遂げやすくなります。意図を頭の中だけに留めず、ことばにして誰かに伝えることが、行動へのスイッチになるのです。