いつの時代でも仕事に求められるのは新しい発想だ。今の環境にない考え方をするために、ビジネス本を読んだり、異業種交流会に出たりするわけだが、私はその片隅に哲学関連の書物を読むことを勧めたい。哲学書には、世間の常識とはかけ離れた、ある種、突飛な考え方や見方が展開されている。それを知ることで従来の見方から自由になれる。一般とは異なる次元で物事を見ることができれば、新たな価値観が生み出せる。

たとえば、ニーチェは「どのような言葉もそれだけで1つの偏見である」と書いている。実際、「女子」「女性」「女」という似た言葉も各々異なるイメージと背景が内包されている。この感性に気づくと、言葉に対する意識が繊細になる。商品のネーミングにも影響があるはずだ。

さらに、哲学書には人の心に入り、人生を変えるような言葉も散見される。仕事が辛い、苦しいと感じるときの思考の転換も示唆されている。

ここに挙げた3冊は、いずれもパラパラとページをめくって、目にとまった個所を読めば十分である。研究者のように歴史的背景などを深く探究する必要もない。肝心なのは、むしろ多くの種類の哲学書に触れてみること。その蓄積は今後の仕事に人生に、必ずや役立つはずだ。

■発想の転換のヒントが満載

『人間的、あまりに人間的(I、II)』
    フリードリッヒ・ニーチェ/ちくま学芸文庫

ドイツの哲学者、ニーチェの代表作の1つ。音楽家・ワーグナーとの決別を契機に、ノートに書きためた格言的言葉がまとめられている。形而上学や宗教、芸術の否定を根源としながらも、その言葉には着眼点や発想の転換、洞察などのヒントがあり、生への不屈の力も見ることができる。断章が多いので読みやすい。