「世界の天辺に登る夢を持ち続けた」冒険家は、70、75、80歳と、ついに3度目となる世界最高峰制覇を成功させた。三浦雄一郎氏と長年の親友である大前研一氏が三浦家の「挑戦し続ける生き方」を語る。

宇宙を歩いて登る感覚でした

三浦雄一郎
1932年、青森県生まれ。北海道大学獣医学部卒業。66年富士山直滑降、85年世界7大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。今回のエベレスト登頂成功は2003年、08年に続く3度目の快挙である。冒険家、プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長。

【大前】三浦さん、どうもお疲れ様でした。お帰りなさい。

【三浦】無事帰ってきました(笑)。

【大前】三浦さんが初めてエベレストに登ったのは2003年5月。当時、世界最高齢の70歳7カ月で登頂に成功した。それから5年後の08年5月に75歳で2度目の登頂を果たし、さらに今回、13年5月23日に80歳にしてまたまた3度制して、最高齢のギネス記録を更新された。

実は10年前、70歳で最初にエベレストを制した03年に、プレジデント誌で対談させていただいたんですよね。

【三浦】そうでした。

【大前】あのときは、「人生をいかに楽しむか」「遊び心」ということで、私の好きなテーマでお話しさせていただいた。今回はその後の三浦さんの軌跡といいますか、遊びを超越した三浦さんの偉業というか、不屈のチャレンジ精神に迫ろうかと(笑)。

大前研一

【三浦】いやいや、基本的には今回も徹底して「遊べる」登山を考えてやったんですよ。だから成功できたんです。

山登りは皆、苦しんで苦しんで、頑張り抜いたり、命を落とす方もいるわけですけど、今回の登頂は「年寄り半日仕事」という日本の諺を取り入れましてね。特に心臓の手術をした後なものですから。

【大前】去年の11月と今年の1月に心臓の不整脈手術を受けられた。

【三浦】ええ。だから、今までの登山の常識を全部ご破算にして、今回は自分に都合のいいように登山計画を立てました。全部の行程を半分にして、最終的に5300メートルにあるベースキャンプから頂上(8848メートル)に行くまでにキャンプを2つ増やしたんです。