80になったら、もう1度登ろう
【大前】当日、山頂は快晴だったみたいですね。景色はいかがでしたか?
【三浦】快晴。それもほとんど無風。今回は6000メートルぐらいに雲海が広がって、その上に6500、7000、8000メートルの山々が頂を覗かせていました。まさに神々の世界、そんな感じがしましたね。もう2度と来れないから、じっくり目に焼き付けてきました。
【大前】これは重大発言。もう次はない?
【三浦】3度登れば十分ですよ(笑)。
【大前】酸素マスクを外してましたね。
【三浦】マスクを外してまず衛星携帯で恵美里(三浦氏の長女)に電話をしまして、それから本人だという証明写真を撮らなきゃいけないからゴーグルも外して。酸素が地上の約3分の1しかないから、ほとんど無酸素状態。本当なら5分と持たないのに、景色を眺めたり、スポンサーのフラッグの写真を撮ったりして、気が付いたら1時間ぐらい経ってました。
【大前】それはすごい。体の限界は感じなかったんですか?
【三浦】5分おきぐらいに一応、マスクを戻して酸素を吸ってましたから。それでも吸わない5分間は、意識をしていませんが、体には相当負担になったようです。
【大前】おかげで下りるのが大変だったみたいですね。それにしても3度エベレストの頂に立った感慨というのは、それまでの2回と違うものですか?
【三浦】いや一緒です。死ぬような苦労をして世界の頂点に立ったんだと。違うとすれば、「もう2度と来ることはないだろう」という去りがたい気持ち。それで1時間近くいましたから。これ以上ないくらいの達成感、充実感がありながら、心の底では「どうやって生きて帰るか」と。
【大前】ところで、もう1度、エベレストに行こうと決断したのは、いつだったんですか? 75歳で下りてきたときには、そんな感じはしてなかったですけど。