「世界の天辺に登る夢を持ち続けた」冒険家は、70、75、80歳と、ついに3度目となる世界最高峰制覇を成功させた。三浦雄一郎氏と長年の親友である大前研一氏が三浦家の「挑戦し続ける生き方」を語る。

チョー・オユーに85歳で登りたい

三浦雄一郎 
1932年、青森県生まれ。北海道大学獣医学部卒業。66年富士山直滑降、85年世界7大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。今回のエベレスト登頂成功は2003年、08年に続く3度目の快挙である。冒険家、プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長。

【大前】私はちょうど70歳で三浦さんと10歳違いですが、自分が75歳、80歳になったときのイメージがあまりない。ただ、今やっているスキーやダイビング、トライアルバイクやスノーモービル、それから若い頃から続けてきたクラリネットをバタンキューするまで続けられたらいいな、と。だらしないんですけど、高い目標がない。三浦さんは85歳や90歳になったときに自分が何をやっているというイメージはありますか?

【三浦】僕も一緒ですよ。今まで通り山に登ったり、スキーができればいい、と。中国にチョー・オユー(ネパールとチベット自治区にまたがるヒマラヤ山脈の山。標高世界第6位)という8200メートルの山があって、ここは山頂からスキーで滑れるんです。85歳では、これを豪太と一緒にスキーで滑ってこよう、と思っています。まず登れなきゃ話になりませんが。

【大前】結構難しい?

【三浦】いや、8000メートル級では1番やさしい山の1つです。

【大前】どこから山に入るんですか?(チベットの)ラサから?

【三浦】ラサから車で2日ぐらいかかって、あとはキャンプを上げていきます。

【大前】85歳で?

【三浦】85歳で。

大前研一

【大前】言っちゃうと、やる人だから(笑)。三浦さんを突き動かす原動力は何ですか?

【三浦】単純に「やりたい」という気持ちと、やっぱり世界の天辺に登る夢ですよね。夢の力。これが大きいと思います。

【大前】子供の頃からの夢だからやり遂げられたと言う人もいますけど、三浦さんはそういう夢を持っていたんですか?

【三浦】子供の頃というより、僕が北海道大学で山岳部の連中と山で遊んでいたちょうど20歳の年の1953年5月29日に、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイがエベレストに登った。「俺も一生のうちに1度はエベレストに登りたい」と思って、その夢が70歳でかなったわけです。