時価総額5兆ドルを突破急成長の理由は「AI」
今年10月、エヌビディアは世界で初めて時価総額5兆ドル(約770兆円)を突破しました。4兆ドルを超えたのはその3、4カ月前のことだったので、常識では考えられないスピードの株高を見せていることになります。
もともと米国テック業界といえば、アルファベッド(グーグル)、アップル、メタ・プラットフォームズ(フェイスブック)、アマゾンのGAFAが知られていましたが、そこにマイクロソフトが加わってGAFAMと言われるようになりました。しかし最近は、さらにエヌビディアとテスラを加えた「マグニフィセント・セブン(M7)」が、株式市場で特に注目される巨大テック企業群として位置づけられています。
これらの企業が今、世界中で超大規模なデータセンターの建設・運用に巨額の投資をしています。たとえば、アマゾンはネットショップから始まりましたが、今やデータセンターを活用したクラウドサービスが主力となりつつあります。検索エンジンがメインだったグーグルも、現在はより広範なデータセンターおよびクラウドコンピューティングの分野に軸足を移しています。
データセンターとは、簡単に表現すると、コンピュータが何千、何万と集積した巨大なサーバー施設のこと。これらのコンピュータを仮想化技術によって1個の巨大コンピュータのように扱うことで、圧倒的な演算能力を実現しているのです。
データセンターでは、ソフトウエアを使って計算能力を細かく分け、顧客ごとに必要な計算能力を柔軟に提供しています。これにより、ハードウエアの制約にとらわれず効率的にリソースを利用し、より多くの顧客にサービスを提供できるのです。データセンターの処理能力が高ければ高いほど多くの顧客にサービスを展開できるため、各社はこぞってデータセンターを建設しているわけです。
これらのデータセンターは、M7が提供するクラウドサービスの基盤としての役割を担っています。マイクロソフトのクラウドサービスである「アジュール」やアマゾンの「AWS」、グーグルの「GCP」などは、すでに世界中の企業が利用しています。そして今後は、メタやアップルも同様に参入するのではと言われています。
しかし、ここにきてM7がデータセンターにさらなる巨額投資をしているのは、単なるクラウドサービスの提供、拡充だけが目的ではありません。その真の狙いは「AIデータセンター」です。AI技術、特に生成AIやAIエージェント(人間の代わりに作業を自律的に行うAI)の進化には、従来のコンピューターでは賄いきれない膨大な演算能力が必要不可欠です。AIが自律的に動くためには大量のデータを学習させる必要がありますが、その学習や、学習済みモデルの保存・利用の場所としてデータセンターが活用されているのです。
AIの学習時間は、演算能力の向上によって飛躍的に短縮されています。たとえばかつて300日かかっていた学習が30日に短縮され、いずれ3日で学習するようになる、といった具合です。開発に300日かかる市場への参入は、通常のソフトウエア企業にとって簡単なことではありません。しかし、それがデータセンターを活用することにより3日で済むようになれば、参入企業はどんどん増えていくはずです。
こういった流れもあり、AIが広がっていく状況が生まれました。AIの活用は今後、自動運転、小売店の在庫管理、製造業、水産業、医療など、あらゆる分野に広がると見込まれています。これらの処理や学習の多くは巨大なデータセンターを介して行われるため、データセンターに対する需要はますます膨らんでいくでしょう。
そして、データセンターの巨大化、特にAIによる計算能力の強化要求は、半導体メーカー、中でもGPU(画像処理装置)メーカーに対する需要を劇的に高めています。現在、AIチップ市場を牽引しているのはエヌビディアであり、M7をはじめとするハイパースケーラーは、エヌビディアの最大の顧客となっています。この需要の一点集中こそが、エヌビディアが急成長を見せる最大の理由なのです。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント



