リーダーは貴重な時間をどう使うべきか。スターバックスコーヒージャパンでCEOを務めた岩田松雄さんは「新卒で入社した日産自動車で、効率を徹底的に意識するよう鍛えられた。持ち時間の違いを生み出すのは小さな積み重ねだ」という――。

※本稿は、岩田松雄『新版「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

エレベーターの行き先階ボタンを押す手元
写真=iStock.com/m-gucci
※写真はイメージです

「行き先階ボタン」と「閉まるボタン」

会社の資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」といわれます。それ以上に、最も大切な資源は、「時間」です。時間は決して取り返しの利かない資源だからです。

これは、リーダーの行動についても同じことがいえます。与えられた時間はみな同じ。ですから、時間と効率を常に意識することがとても大切です。私は幸いにも、日産自動車で若いときにこれを徹底的に鍛えられました。

工場で生産管理の仕事をしているとき、ストップウォッチを片手に動作分析を担当していました。現場に行って、どの作業にどのくらいの時間がかかっているのかを洗い出します。さらに、その上で、どうすれば作業を早く無駄なく正確に行うことができるのか、分析していったのです。

こうした細かな「カイゼン」の積み重ねで、日本の製造業は、効率的な製造プロセスを作り上げ、世界一となりました。そして同時に、これはどんな業種でも、どんな仕事においても、もっといえば日常的な小さな行動でも同じだと私は思います。

例えば、エレベーターに乗るとき、やるべきことは、「行き先階ボタン」を押すことと、「閉まるボタン」を押すこと。

では、どちらを先に押せば効率的なのか、答えはおわかりでしょうか。

「閉まるボタン」を押してから、「行き先階ボタン」を押すことです。

こうすると、先に「行き先階ボタン」を押して、それから「閉まるボタン」を押すよりも、0.数秒ですが、早く扉を閉める指示を出すことができます。わずか0.数秒、とも思いますが、これが積み重なっていくとどうなるか。0.数秒は数秒になり、それが積み重なって数分になり、やがて何時間、何日にもなるのです。

できることは、すぐにやってしまう

時間と効率を意識するという基本動作があるかないか、それを若い頃に身につけているかどうかで、手にできる時間に大きな差が生まれます。小さな積み重ねが、持ち時間の違いを生み出すのです。

人間に与えられている時間は、誰に対しても公平です。一日に24時間しかない。その時間をどう有効に使うか。無駄なくいかに効率的に使うか。その意識の差が、人生において大きな差を生むのだと思います。

例えば、同時にできることは同時にする。同時にできないときには、どちらを先にこなせば効率的なのかをすばやく考える。無駄に思える時間は極限まで減らしていく。そうした習慣が、効率的な時間の使い方を可能にするのです。私はお風呂で、どういう順番で洗えば効率的かということまで真剣に考えたこともあります。

そしてこれが、行動力にも大きな影響を与えます。何をすべきか。いつすべきか。時間と効率を意識することが、行動力をも高めることになるのです。

基本的に私のスタンスは、極めてシンプルです。それは、できることはすぐにやってしまう、ということ。人は物事をすぐに忘れてしまうからです。忘れてしまってトラブルになれば、解決に何倍もの時間を使わないといけなくなります。

だから、すぐにやる。すぐに動く。