※本稿は、五十嵐剛『任せる勇気』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
自分一人で抱え込むか、時間がかかっても人に教えるか
2人の農夫がいました。
それぞれ、未開拓の広大な畑を耕そうとしています。
1人の農夫は、まず、黙々と1人で鍬を振り続けました。やがて、疲れてきたところで「誰か手伝ってくれ!」と叫びます。
しかし集まってきたのは、鍬の持ち方すら知らない人たちでした。
「結局、自分でやるしかないのか……」と、彼は途方に暮れます。
もう1人の農夫は、違いました。
彼はまず、周囲の人に畑を耕すためのノウハウを教えることから始めたのです。その結果、彼は頼もしい農夫に育った仲間たちとともに、効率的に畑を耕すことができました。
このように、最初の準備を怠ってしまうと、リーダーは「任せられる人がいない」と悩み続けることになります。
「任せられる人を探す」こと自体が間違い
リーダーがよく頭を悩ませる問い。
「誰に任せるか」
ここに苦戦し、結局「任せられる人がいない」と嘆く人が後を絶ちません。
私自身も、かつてはそうでした。
「自分ばかりが忙しくて、メンバーは成長しない」
「結局、誰に任せても期待以上の成果が出ない」
このように「任せたくても任せられない理由」は、メンバーの能力不足のせいだと思い込んでいたのです。
しかし、あるとき、気づきました。
「任せられる人を探す」こと自体が、根本的な間違いである、と。
あなたが新入社員だった頃、あるいはまったく経験のない分野の仕事を任されたとき、最初から完璧に、誰の助けも借りずに成果を出せたでしょうか?
そんなことは、決してありませんよね。誰もが先輩やリーダーから教わりながら、助け舟を出してもらっていたはずです。一人前に仕事がこなせるまで、サポートを受けて育てられた経験があるはずです。
そして、あなたのメンバーも、当然ながら成長の途中。だから、今あなたが期待するほどの成果を出せていなかったとしても、それは当たり前のこと。
「任せられる人」とは、最初から完璧な「適材」としてチームに存在するわけではありません。
リーダーが育てるからこそ、「適材」となるのです。
「適任者を探す」という思考は、捨ててください。

