「宝くじに当たった」「受験に合格した」声が続出
東京・巣鴨の地蔵通り商店街に、平日から人の流れが絶えない一角がある。真っ赤なパンツを店内いっぱいに並べた「マルジ」だ。干支やメッセージ入りの赤パンツに赤色の靴下などを含め300種類以上、95%を店のオリジナル商品が占める。
日本には古くから、魔除けや健康祈願と結びついた「赤い下着」にまつわるさまざまな言い伝えがある。中世から江戸期にかけて、赤い布やふんどし、腹巻きは邪気を祓い、冷えや病気を防ぐ病除け・安産・健康祈願の道具とされた。神事では「厄落とし」、武芸では「勝負色」としても使われてきた。科学的根拠はもちろんない。だが実際、世界で唯一の赤パンツ専門店「マルジ」には、愛用する客から年中こんな声が寄せられる。
「宝くじに当たった」「念願の子どもを授かった」「受験に合格した」「商談がうまくいった」「病を克服した」――。
「10円でも売れまへんで」と笑われたが…
始まりは、1993年11月の終わり頃。「赤いパンツはありませんか」と一人の女性客が訪ねてきた。それから1~2週間の間にさらに別々に2人の客が同じことを尋ねてきた。初めてのことだった。店に赤いパンツは置いてなかった。不思議に思いながら、大阪や東京の問屋に問い合わせたが、どこも扱ってないという。
「それなら作ってみようか」。店主が大阪の縫製工場に問い合わせると、「そんなモン10円でも売れまへんで」と笑われる。12月、その工場から「赤色に染めた生地が2反余っていて、ミシンに空きができたので今なら作れる」と連絡が入った。
「2反で240枚の赤パンツができる。全部損してもいいから、試しに作ってみよう」
当時まだ、「赤い下着」は各地に残る風習や祭りにちなんで親しまれる程度のものだった。ところが、急遽仕入れた240枚の赤パンツはおよそ1カ月で売り切れ、マルジはすぐに本格生産に向け動き始める。刺繍やメッセージ入りの「多品種化」に挑むのと比例して、売り上げは右肩上がりに。メディアから取材依頼が頻繁に入るようになり、「おばあちゃんの原宿」に誕生した新名物「マルジの赤パンツ」は徐々に全国区に広がった。さらに、2004年の申年には「申年に赤い下着を身につけると、病いが去る(サル)」という言い伝えの発信と相まって、爆発的なヒット商品となった。


