病気ではない体調不良は「歳のせい」として諦めるしかないのか。医師の和田秀樹さんは「フレイルの可能性がある。加齢とともに心身の運動機能・認知機能などが低下しているけれど、適切な対応によって、機能の維持・向上が可能な状態だ。また、高齢者の『うつ病』は見逃されやすいので、注意が必要だ」という――。
※本稿は、和田秀樹『喪失感の壁 きもち次第で何があっても大丈夫』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
「謎の不調」が続いて不安が募る
「一人暮らしで、年のわりに元気な方だと思っていたのですが、最近、身体のあちこちが動かなくなってきたように感じます。階段を上るのがつらくなり、前屈みになると腰が痛くて立ち上がるのも大変です。
握力も低下していて、料理をしていて調理器具や食器を落とすことが増えました。
けれど、病院で検査をしても大きな病気などはなく、不安だけが募るばかり……。老化と諦めるしかないのでしょうか。何か気をつけることはできるでしょうか。(70代・女性)」
握力も低下していて、料理をしていて調理器具や食器を落とすことが増えました。
けれど、病院で検査をしても大きな病気などはなく、不安だけが募るばかり……。老化と諦めるしかないのでしょうか。何か気をつけることはできるでしょうか。(70代・女性)」
日本版「フレイル」基準でチェック
「フレイル」という言葉を聞いたことはありますか? フレイルは、海外の老年医学分野で使われている「Frailty(フレイルティ)」を語源とした、日本老年医学会が2014年に提唱した概念です。「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」「脆弱」などの意味となります。
具体的には、加齢とともに心身の運動機能・認知機能などが低下しているけれど、適切な対応によって、機能の維持・向上が可能という状態。つまり年を取るにつれ、身体的・心理的に弱くなり、日常生活に支障をきたすものの、要介護まではいかないという状態です。
フレイルの基準としてはさまざまなものがありましたが、日本においては2020年に、日本の高齢者に向けた次の基準が設けられました。
《日本版フレイル基準》(J-CHS基準)
体重減少……6カ月で、2キログラム以上の意図しない体重減少
筋力低下……握力:男性28キログラム以下、女性18キログラム以下
疲労感……ここ2週間ほどで、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度……通常歩行速度が1秒あたり1メートル以下
身体活動……軽い運動・体操、定期的な運動・スポーツを週に1回もしていない
以上5つの評価基準のうち、3項目以上に該当するものをフレイル、1項目または2項目に該当するものをプレフレイル、いずれも該当しないものが健常とされています。
相談者さんは、疲れやすさや握力の低下などを自覚しておられますから、フレイルに当てはまる可能性は高いですね。この状態になると、軽い風邪やストレスでも体調を崩しやすくなるため、早期に自覚して対策していきましょう。

