アパレル会社「yutori」は、創業7年で過去最高の売上高83億円を達成した。社員の平均年齢が25.7歳という若い企業を率いる片石貴展社長は、どんな基準で人材を選んでいるのか。著書『若者帝国 好きな人たちと、好きなことに熱狂して働く』(KADOKAWA)より、一部を紹介する――。
yutori社長の片石貴展さん(片石さん提供)
yutori社長の片石貴展さん(片石さん提供)

yutoriが希望する「人となり」の要素とは

yutoriに入社を希望する若者はどんどん増えている。応募者は、面接や課題提出、社長プレゼンなど、複数のステップを通過しなければならないが、それら採用活動は部長と社長判断で行っている。

その際、応募者が有する客観的なスキルと、それがビジョンや会社にマッチするかどうかの評価と同じくらいに、こちらが希望する「人となり」の要素を決めている。

それを表す言葉が、「優しい、強い、面白い」だ。

株式会社ほぼ日の行動指針「やさしく、つよく、おもしろく」の受け売りなのだけど、この3要素は面接のときに必ずチェックし、採用基準としている。

まず、あくまでファッションが仕事なので、基本的におしゃれであることは大前提だ。そのうえで協調性があり、他人のことを思いやり、助け合える優しさがあるかどうかを必ず見る。

SNSフォロワー数が少ないと採用は難しい

ここで注意が必要なのは、優しくなければ駄目だけど、「優しいだけでは人は救えない」という真実だ。

人を助けたり、支えたりするためには、やっぱり強くなければならない。自尊心が高いことは当然含まれるし、打たれ強さや芯の強さがあるか、また数字や結果に向き合える真摯さがあるかどうかもチェックする。

もちろん、具体的なスキルなどが強さになることもある。例えば、若い子の場合、ひとつの基準として、自分が運営するSNSで、ある程度のフォロワー数を持っていなければ採用が難しくなってきている。ちなみに、世間では学歴を強みとみなすが、僕自身はまったくそうは思わない。

さらに、優しくて強いことを満たしていても、ときどき凄く真面目な人である場合がある。真面目であることは素敵な資質なのだけど、yutoriはクリエイティブな会社だから、人間的な面白さも重要な要素だ。

つまり、この「優しい、強い、面白い」を満たす人は、かなりレアな人という可能性があり、現在、約300人の応募があるとすれば、そのうちひとりが受かるかどうかという狭き門になっている。