スペイン・マドリードでたこ焼き専門店「BALÓN TOKIO(バロン・トキオ)」を経営している一戸隆太さん(32)は、かつてプロサッカー選手を夢見ていた。ケガでその夢を諦めた後も、変わった方法でサッカーに関わり続けている。その方法とは何か。スペイン在住ライター・きえフェルナンデスさんが一戸さんに取材した――。
バロン・トキオの店主、一戸隆太さん
筆者撮影
バロン・トキオの店主、一戸隆太さん

マドリードの若き「たこ焼き店主」が追う夢

目標や夢を達成できる人は、わずか8%――。米国スクラントン大学の調査は、残る92%の人が途中で諦めるか、叶えることなく人生を終える現実を示す。

だが、その92%から再び立ち上がろうとする人もいる。

とある平日の午後9時、スペイン・マドリード中心街。たこ焼き専門店「BALÓN TOKIO(バロン・トキオ)」は、ディナーのラッシュタイムだというのに静かだった。客席にはスペイン人カップル1組だけ。鉄板の上のたこ焼きを軽やかに返す店主の一戸隆太さん(32歳)は、一見すると普通の日本人経営者だが、胸の内は明確だ。

「最終目標は、サッカーチームを作ること」

一戸さんは、かつてプロサッカー選手を目指していた。冒頭で示した「92%」側の人物と言えるだろう。夢を諦め、24歳の時にマドリードでたこ焼き店を立ち上げた。しかし、いまでは店を経営しながら、形を変えて夢を追い続けている。

「今年に入り、やっと黒字に戻ってきました」

安堵の笑みを浮かべる一戸さんは、プロ選手の道を諦めてもなお、スペインのサッカー界に関わり続けている。いったいどんな方法で――。これは日本から遠く離れた地で、別の方法で夢を叶えようと奮闘する日本人男性の物語だ。

外はカリカリ中はトロトロなバロン・トキオのたこ焼き
筆者撮影
外はカリカリ中はトロトロなバロン・トキオのたこ焼き