なぜトヨタは世界をリードする企業になれたのか。エンジニアとして新卒入社した戦略コンサルタントの山本大平さんは「トヨタの生産現場や社内コミュニケーションは一見、非合理的・非効率に感じたが、いま振り返ると、それがトヨタの強さの源泉の一つかもしれない」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、山本大平『最強トヨタの最高の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

トヨタ自動車株式会社
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トヨタは「合理性の理想郷」と思っていた

私が新卒でトヨタの門を叩いたのは、ある種の確信にも似た「野心」があったからです。世界最強と謳われるこの企業で、こんなちっぽけな自分でも、成長して世の中に喜ばれるような仕事を残したい。そんな青いけれども、真剣な情熱を胸に抱いていました。

学生時代の私は、論理と数式で世界の成り立ちを理解しようとする典型的な理系の研究者でした。物事には必ず法則があり、複雑に見える事象も分解して体系化すれば、必ずシンプルな構造として理解できると信じていました。

そんな私にとって、入社前のトヨタのイメージはまさに「合理性の理想郷」でした。

どこまでも泥臭い、人間臭い世界

そして、私が書籍で学んだ「トヨタ生産方式」は、生産という複雑極まりない活動を「ジャストインタイム」と「自働化」という2本の柱を軸に、見事なまでに論理的なシステムとして構築しきっているように見えました。

そこには、曖昧な精神論や個人の才能に依存するようなウェットな要素は一切なく、ただただ純粋な合理性だけが存在しているように感じられたのです。そのため、この完璧なシステムを動かす「思考のOS」ともいえる「型」を誰よりも早くマスターして、それを自在に使いこなすことが、エンジニアとしての最初の目標でした。

そうすれば、この偉大なシステムの一部として確実に成果を出せるはずだ。私は、本気でそう信じていました。しかし、エンジニアとして初めて愛知・豊田市の工場に足を踏み入れたとき、その理想は心地よい音を立てて崩れ去りました。

目の前に広がっていたのは、およそスマートとは程遠い、どこまでも泥臭く、人間臭い世界だったのです。