牛丼並盛の480円から450円への値下げをアピールする牛丼チェーン「すき家」のポスター
写真=iStock.com/winhorse
牛丼並盛の480円から450円への値下げをアピールする牛丼チェーン「すき家」のポスター

長引く物価高で、「節約疲れ」を感じている人も少なくないだろう。そんななか、静かに広がりつつあるのが、「インフレ下の値下げ」だ。何が起きているのか。

帝国データバンクによると、10月の飲食料品値上げは3024品目、1回あたりの値上げ率の平均は17%。10カ月連続で前年を上回り、連続増加期間としては前月に続き、2022年の統計開始以降で最長を更新した。

「物価高はもううんざり」という人を打ちのめす、こんなデータも発表されている。

日銀が10月10日に発表した9月の生活意識に関するアンケートによると、1年後の物価が現在と比べ「上がる」と回答した人は9割近く。リーマン・ショック直前の08年6月調査以来の高水準という。

とはいえ、「変化の兆し」もみられる。

インフレが長期化すると見通す消費者が増えるなか、「インフレ下の値下げ」に注目しているのが、野村アセットマネジメントの鈴木皓太シニア・ストラテジストだ。

「日本全体で値上げが続くなか、市場参加者に驚きを与えるような値下げの事例も出ています」

鈴木さんの念頭にあるのは、牛丼チェーン「すき家」が9月4日から始めた、牛丼並盛を480円から450円にする11年ぶりの値下げだ。これは客離れを防ぐために選択された戦略とも言われている。鈴木さんはこの背景に、「長引くインフレで家計の財布の紐が固くなっている状況があるのではないか」と指摘する。

実際、飲食店に予約・顧客管理システムの開発・提供などを行う「テーブルチェック」(東京都中央区)の調査によると、1店舗当たりの来店人数は24年半ば以降、緩やかな減少傾向がみられる。

「買い控え」の心理が働きやすいのが、耐久消費財(家電などの耐用年数が比較的長めの消費財)だ。消費者マインドを表す内閣府の「消費動向調査」で示される指標の一つ、「耐久消費財の買い時判断」は、インフレが始まった22年あたりから低迷状態が続いている。

「いずれもインフレによって家計が消費を抑制、または取捨選択している状況を示しています」(鈴木さん)

消費者の「節約志向」がうかがえるデータはほかにもある。鈴木さんが提示するのは、生鮮食料品の「肉」の種類別の購入数量を比較する手法だ。