「アフリカ・ホームタウン騒動」が暗示するもの
国際協力機構(JICA)が8月に開始した「アフリカ・ホームタウン」事業が、交流サイト(SNS)での「炎上」の末、約1カ月で撤回されました。「アフリカから移民が押し寄せる」といった誤解に基づく抗議が、ホームタウンに選ばれた国内4自治体に殺到したためです。政治部の田所柳子記者は、騒動で失われた日本の国益は小さくない、と指摘します。
ホームタウン事業の撤回は、4自治体がそれまで地道に続けてきた交流事業に打撃を与えただけではない。抗議の多くは外国人へのヘイト(憎悪)を含んでいる。日本での排外主義の広がりを国内外に印象づけかねない、後味の悪い結果となった。
毎日新聞「国益損ねた排外主義 ホームタウン事業撤回 SNSでは『勝利宣言』」(2025年10月9日)より引用
2025年8月下旬――JICA(国際協力機構)の海外協力事業がSNSで大炎上した。いわゆる「アフリカ・ホームタウン騒動」である。
一応の決着を見たこの「アフリカ・ホームタウン騒動」はマスメディアでは、「SNSの誤情報の拡散によって、意義ある政策が頓挫してしまった」――という記述が“正史”ということになっているようだ。
しかしながらSNSでの炎上は原因というより結果で、その原因は主にナイジェリア政府の勘違い声明とそれに(ろくに裏取りもせずに)飛びついたBBCの雑な初報の影響が大なのだから、「SNSの炎上にやられた」という最終結果の部分だけをクローズアップするのは、オールドメディアの責任をやや棚上げした態度のようにも見えてしまう。
「日本が日本でなくなってしまう」という恐怖
今回の騒動について、オールドメディアの「まとめ方」には引っかかりを感じるところはあるものの、とはいえこの「アフリカ・ホームタウン騒動」によって可視化されている多くの人びとの不安や憤りの声そのものは、「デマに踊らされた人たち」と雑に冷笑して仕舞いにするのではなく、別個の問題として真剣に対峙したほうがよい。
公正を期するために付言しておくと、JICAはどちらかといえば反日どころか「ド」がつくレベルの親日機関である。いわゆる海外協力隊はもちろん、インフラ整備や資源開発や教育支援などを通じ、日本の資本や技術を利活用して各国に(よい意味で)影響を及ぼし、アフリカをはじめ途上国における日本へのイメージアップや政治的影響力の拡大にも貢献してくれていた。そういう意味では、いまどきの日本人が大好きな「日本スゴイ」系コンテンツの元ネタを生み出してくれていた機関でもある。
……だが言い換えれば、そんな「超がつくほど親日的」組織であるJICAでさえ迂闊なことをすればこれまでの働きなど灰燼に帰する勢いで大炎上してしまうくらいには、いまの世の中に「日本が日本でなくなってしまうかもしれない」「日本が“ちゃんとした国”としてはいられなくなってしまう」という恐怖が渦巻いているということでもある。大衆が抱いているこの素朴な感情については、繰り返しになるが本当に真摯に向き合わなければならない。

