人生に意味はあるのか。この根源的な問いに、ルーマニアのある哲学者は「本質的な意味はない」と答えた。哲学者・小川仁志さん監修の新刊『スッと頭に入る哲学 哲学は人生の道しるべ』(昭文社)から、楽に生きるための秘訣を紹介しよう――。
※本稿は、監修・小川仁志『スッと頭に入る哲学 哲学は人生の道しるべ』(昭文社)の一部を再編集したものです。
人生に意味を求めるから苦しみが生まれる
「自分の人生に意味はあるのか?」という問いは、多くの人がふとしたときに抱く根源的な疑問です。特に、自分の価値が見出せないほどに落ち込んでしまったときや将来に思い悩んだときこそ、こうした悩みが頭をかすめることでしょう。
この問いに対し、古代ギリシャの時代から哲学者たちも多くの思考を巡らせ、それぞれのこたえを出してきました。ロマンチックなこたえや努力による克服を示す哲学者もいる中で、ルーマニア出身の哲学者エミール・シオラン(1911~1995年)は、まったく異なる視点を提示しています。
シオランは、「人生には本質的な意味などない」という立場を取ります。人生に意味を求めようとすること自体が、人間の不安や苦しみの原因になると考えたのです。
彼は若くして「絶望」を哲学の出発点に据え、生きることの不条理さや空虚さを見つめ続けました。しかし、それは単なる悲観ではありませんでした。むしろ、意味の不在、人生のこたえはないということを受け入れたとき、人ははじめて自由になるというのが彼の思想です。
「意味があるから生きる」のではなく、「意味がないからこそ、自分なりの方法で生きていい」。それがシオランの考える、逆説的な人生の肯定なのです。この視点に立てば、「意味のなさ」は空虚なものではなく、人生を他者の期待や社会的役割から解き放ち、自分自身で選び取るための余白になるともいえるのです。

