食事で幸福を感じるにはどうすればいいか。医師の山下明子さんは「私たち日本人は食事の『快楽中毒』に陥っており、食事の本来の意味を見失っている可能性が高い。ただの『快楽』や『義務』として食事をするのではなく、食を通じて、人とのつながりを感じることが『食べる瞑想』の第一歩だ」という――。
※本稿は、山下明子『食べる瞑想』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
日本人が食事の「快楽中毒」に陥り見失ったもの
「あー、お腹減った!」
お腹がぺこぺこのとき、食事にありつけると最高の幸せを感じますよね。これは、人間に備わっている脳の仕組みが深く関わっています。
食事をすると、脳の「報酬系システム」が活性化します。これは快感や満足感を感じさせる脳の広大なネットワークで、このシステムのおかげで、私たちは「食べる」という根源的な欲求を感じ、大きな喜びを得られるようにできています。
さらに、ただお腹が満たされるだけでなく、食べ物を「美味しい」と感じたとき、この報酬系システムは一層強く反応します。脳が「これはいい!」と興奮するため、より強い快楽に包まれるわけです。
そして、この快楽に依存しすぎてしまっているのが、現代人の特徴です。
食事に「快楽」を求め、食べることが「義務」となり、食事そのものを心から楽しめなくなっています。
特に日本人は、「食べる快楽」への依存が強い傾向にあります。
株式会社TENGAが2019年に実施した「マスターベーション世界調査」の結果を見てみると、日本人は他国と比べて、圧倒的に「美味しいものを食べる」ことを快いと感じる傾向にあることがわかります(図版参照)。
つまり、私たち日本人は食事の「快楽中毒」に陥っており、食事の本来の意味を見失っている可能性が高いのです。


