睡眠は最初に確保すべき「削ってはいけない」時間
日本人は世界の中でも、極めて「眠れていない国民」であることをご存じでしょうか。
国際的なデータを見ると、日本人の平均睡眠時間は6時間20分ほど。欧米諸国の7時間20分前後と比べると丸1時間も短いのです。つまり、日本は世界的に見ても、慢性的な「睡眠不足の国」であるわけです。
その背景には、日本人の「睡眠を軽視する価値観」がある、と私は考えています。仕事や勉強、家族との時間、趣味や交際をまずは優先し、残った時間で寝る――。睡眠は「余り時間で行うもの」と考える人が多いのではないか、と。
例えば、欧米の人たちと話していると、睡眠への向き合い方が日本人とはずいぶん異なることに気づかされます。彼らにとって「この時間は寝る時間」と決めるのは当たり前で、誰に教わるわけでもなく、睡眠は自然と日々の生活における最優先事項として位置づけられている。「忙しいから仕方ない」と眠る時間を削るのではなく、「忙しいからこそ寝る」。そこに大きな文化的な違いがあります。
睡眠学的に考えると、睡眠を「余り時間で行う」という価値観には非常に大きな問題があります。なぜなら、睡眠は本来、削ってはいけない「固定費」のようなものであるからです。住宅ローンや電気代を後回しにできないように、睡眠は最初に確保すべき不可欠な時間なのです。
日本と欧米諸国との「1時間」という睡眠時間の差が、健康や経済の生産性に及ぼす影響は計り知れません。
健康面では、睡眠不足はうつ病の発症リスクを高め、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患の危険因子となり、長期的には認知症やがんの発症とも関連しています。免疫力も低下し、風邪や感染症にもかかりやすくなります。つまり、睡眠不足は「万病の入り口」と言えるほど広範囲に悪影響を及ぼします。
慢性的な睡眠不足はワイン1本の酩酊状態
次に、経済における「生産性」と睡眠の関係について見ても、睡眠不足による脳の機能低下がもたらす影響は深刻です。
例えば、徹夜明けの脳の状態は、血中アルコール濃度0.1%の状態に匹敵するという報告があります。これはワインなら1本、日本酒なら3合を飲んだ状態にあたります。慢性的な睡眠不足は、酔ったまま仕事や勉強をしているのと変わらないのです。
そうなると、睡眠不足のときは単純作業ならごまかせても、創造的な思考や判断力、メタ認知といった高度な機能が求められる仕事の生産性は著しく落ち込みます。
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