いつも体が重いのはなぜか。答えは「休み方の戦略」にある。極限下で任務を遂行する米軍が実践する最強のリカバリー術に学ぼう。

なぜ米軍は任務前に8時間以上も眠るのか

極限の状況下で任務を遂行する米軍では、さまざまな休息法が実践されている。休息の中でも重要な睡眠については、1日最低7時間以上取ることが推奨されているが、実際には戦闘任務や夜間作戦などで睡眠時間が短くなることも少なくない。そのような状況に備えて、兵士は任務の事前に8時間以上の睡眠を取ることが推奨されている。

研究によると、兵士が一晩4時間未満の睡眠しか取れない場合、戦闘における能力は15~25%低下する。一方、通常より多く睡眠を取ること(例えば10時間)は、短期間の睡眠不足の期間中における注意力とパフォーマンスを向上させることが示されている。

一般に「寝だめ」と呼ばれるこの方法について、日本リカバリー協会の代表理事で、『休養学』の著者である片野秀樹さんはこう説明する。

「寝だめ、つまり睡眠を『ためる』ことはできないというのが学術的な見解です。むしろ、日頃の睡眠不足からくる『睡眠負債』を補っていると考えた方が正しいでしょう」

片野さんは、アメリカ人と日本人の平均睡眠時間の違いにも注目する。

「OECDの2021年の調査によると、アメリカ人の平均睡眠時間は8時間59分で、7時間42分の日本人より約80分も長くなっています。つまり、米軍の9時間睡眠は、日本人からすると『寝だめ』をしているように思えますが、実はアメリカ人の平均的な睡眠時間なのです。ですから、平均的な睡眠時間を確保しづらい軍の方々が、作戦に入る前に睡眠負債を補う対策を取っているのではないかと思います」

一方、日本人の中にも睡眠不足を感じている人は多いと片野さんは指摘する。OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間29分であり、日本人の平均睡眠時間は、OECD加盟国の中でも最下位レベルの短さだ。

なぜ日本人は睡眠不足になってしまうのか。片野さんは、オフの時間の過ごし方に問題があると指摘する。

「なんとなくスマホを見たりゲームをしたりして就寝時間を後ろ倒しにし、無意識のうちに睡眠時間を削ってしまっている人が多いのではないでしょうか。大切なのは、オフの時間をマネジメントすることです。勤務が終わってから翌日朝までの時間を、まず自分でしっかり設計することが重要です」

多くの人が自分に適した睡眠時間を把握していないことも問題だという。