<世界最大の民主主義国家で友好国のインドに50%の関税を課す一方で、中国やロシアに甘い外交姿勢はインド太平洋に戦争も招きかねない:カルロ・ベルサノ>
株式市場データの仮想インターフェース上のインドルピー紙幣
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第二次トランプ政権の皮肉は、「アメリカ・ファースト」を叫ぶその強硬さにもかかわらず、結果的に彼が歴史に残すのは世界秩序の大転換かもしれないことだ。

それが吉と出るか凶と出るかはまだ分からないが、たとえばウクライナについてトランプがロシアと結ぼうとしている取引は、1938年にヨーロッパ諸国が戦争回避のためチェコスロバキアのズデーテン地方をヒトラーに譲り渡し、第二次世界大戦を招く結果になったミュンヘン会談に似たようなものになる可能性すらある。

あのときイギリスのネヴィル・チェンバレン首相は、和平を実現した英雄としてロンドンに帰還した。プーチンとの取引でトランプが同じ道をたどらないことを願うばかりだ。

もう一つ、地政学的に大きな変化の原因となりそうなのはインドとの関係だ。

インドは世界最大の民主国家であり、人口は14億人を超えて世界一だ。次の大規模戦争の舞台になる可能性もあるインド太平洋地域で大きな存在感を持つ。

過去25年間、アメリカとインドは共通の目標に基づく相互尊重の関係を築いてきた。少なくとも、最近までは。だがトランプは突然、インド政府とモディ政権に対して極めて攻撃的な姿勢を取り始めた。

トランプ政権は、インドに対してアメリカの貿易相手国の中でも特に厳しい関税を課している。インド製品に対する関税率は、8月27日から、現在の25%からさらに引き上げられて50%になる予定だ。

インドは保護主義的とも言われるが、実際の平均関税率は5%未満で、1990年の56%から大幅に低下している。多くの新興国と同様、経済発展につれて貿易障壁は低下する傾向にある。トランプが、貿易政策で他国を威圧することが当然の権利であるかのように振る舞っているのも不可解だ。

インドに対する高関税措置について、トランプはロシア産の原油を買い続けていることに対する「懲罰的なもの」だと述べている。スコット・ベッセント財務長官は、インドはロシアの原油を買い、それを精製し高く売ることで「暴利を得ている」と批判した。