自宅で野菜を育てる人が増えている。この背景には、相次ぐ食品偽装問題に端を発する食への安全志向の高まりや、このところの不況で手軽なレジャーとして注目されたことなどが挙げられる。主なユーザーは20~30代の人たちだが、最近目立つようになったのは定年を迎え、余暇時間を持つようになった団塊世代の男性だ。
右肩上がりの市場規模を、民間調査会社・矢野経済研究所ライフサイエンス事業部の中川純一氏は「野菜苗はトマトのような定番商品からハクサイなど幅広い種類に広がった。また、ブルーベリーといった高価格帯の果樹苗も販売が拡大し、2009年の家庭菜園向け野菜苗・果樹苗の市場規模見込みは、生産者出荷ベースで前年比20%増の139億円」と語る。
実際、東京郊外にあるカインズホームの園芸コーナーでは、休日ともなると1本100円前後のキュウリやナス、ゴーヤ苗を買い求める若い夫婦連れや高齢者の姿で賑わう。同社本部の仕入れ担当者は「野菜苗の売り上げは前年比で1~2割増。初心者も多く、売り場では植え付け、収穫の時期をPOPで表示するなど工夫している」と話す。
最近では、こうしたビギナー、それもマンションのベランダで栽培する人に特化した苗や資材、およびセット商品も発売されている。その結果、家庭菜園市場もゆるやかに伸びていくと、中川氏は読む。ただ、それをしっかりと定着させるには、種苗や販売業者の適切な情報提供といったアフターフォローが欠かせない。
(ライヴ・アート=図版作成)