ビジネスを成長させるにはどうすればいいのか。人事コンサルタントの村上亮さんは「人事制度の構築でつまずいている企業は多い。流行や評判に流されず、その会社に合った制度を導入することが大切だ」という――。

本稿は、村上亮『ベンチャー人事のすごい仕組み』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

マネージャーはラップトップコンピューターで人事情報を確認
写真=iStock.com/tadamichi
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F社の悩み:ゼロイチを生み出せる人材がいない

F社は、2000年代に創業した、消耗品を製造・販売している会社です。

この消耗品は品質面では大手メーカーにかなわないものの、中国産の安価な製品よりは質が良い、というちょうどいいポジショニングを確保したことで、リピート客を獲得し、安定した収益を上げていました。楽天市場やAmazonなどの外部プラットフォームだけでなく、自社サイトで販売することで、より高い利益率を確保しています。

そんなF社が抱えていた課題は、「優秀な人材が採用できない」「採用しても定着しない」ことでした。

F社では消耗品事業に続く第2の事業の柱をつくりたいと考え、いくつかの新たな事業にチャレンジしてきました。

しかし、いずれもうまくいっていません。

事業がうまくいかない理由として、社長が考えていたのは、ゼロからイチをつくるのが得意な人材が不足していることでした。他社にない新規事業のアイデアを考えたり、新規事業を先頭に立って仕切り、軌道に乗せられるような人材です。

消耗品の事業は地道に商品をつくって確実に発送することが肝なので、そうしたゼロイチ(0→1)が得意な人材を必要としません。

そこで新規事業を生み出すために採用していたのですが、20人強の中小企業にはなかなかそういう人材はきてくれません。ゼロイチが得意そうな高学歴の人材が入社したときもありましたが、馴染めずに社内で対立が生じてしまい、すぐに辞めてしまいました。

また、ゼロイチ人材だけでなく、消耗品事業の運営を行なっているスタッフの離職率も高い状況にありました。

どうすれば優秀な人材が採用でき、定着してくれるのか。そんな悩みを解決するために、2017年から私がコンサルティングを行なうようになりました。