女性社員はなぜ面倒くさいのか

具体的にはどのように面倒くさいのか。女性や若手社員が活躍できる社風で知られるリクルート出身で、『女性社員のトリセツ』という著書もある前川孝雄が苦い思い出を語ってくれた。

FeelWorks代表 前川孝雄 
1966年、兵庫県生まれ。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」等の編集長を歴任。

「リクルートで雑誌の編集長をしていた頃、女性の部下からおしぼりを投げつけられたことがあります。私は若くして編集長に任じられて、ビジネススクールで経営を学んだこともあり、気負いまくっていたのです。部下から提案があっても、経営視点での理屈だけでシャットアウトしていました」

ある夜、部下たちと「飲みニケーション」をしようと居酒屋に繰り出したところ、女性部下の1人が泣き出した。仕事の達成感で感涙したのだと勘違いした前川が笑顔で握手を求めると、右手の代わりにおしぼりが顔面に飛んできた。「あんたは何もわかってない!」という罵声とともに。呆然として周囲を見渡すと、部下たちの多くが冷たい目線で前川を眺めていたという。

「猛省しました。その部下は雑誌の売れ行きを無視していたわけではありません。でも、1人の編集者として『私がやりたい企画』も大事に温めていたのです。少なくとも傾聴すべきでした」

猛省したが、部下の心が離れて現場を混乱させたことが「管理職失格」だと指摘され、一時的に降格された。

前川はこの「おしぼり事件」を今でも鮮明に記憶して大切にしている。男女の違いが身に染みてわかったからだ。男性は、組織の一員であるという意識が強く、ポストや報酬がモチベーションとなる。一方の女性は、個の意識が先行し、個人の尊重と仕事の意義を重んじる。出産などで組織を離れる時期もあるため、より客観的になるのだろう。

しかし、前川のようにインパクトのある「反抗」に遭い、素直に反省して言動を改める男性は少数派だ。多くの場合は、「女は面倒くさいから責任ある仕事は任せられない」という判断になるだろう。