意欲が高くて実績もあげている。そんな有能な女性が、なぜ「できないおじさん」よりエラくなれないのか。人事、社会学……多方面の専門家にその理由を探った。

3大メガバンクの1つに総合職として新卒入社し、エリートコースであるアメリカ駐在をしていた斉藤真紀(仮名、34歳)は、現地で退職して失業中だ。

「結局のところ、社内の権力ゲームに興味が持てなかったの。私は出世するための裏工作に精を出すことよりも、やるべき仕事をやるべき形で実現させたかった。くだらないことなしに一直線に仕事の結果を求めて、出世はしてもしなくてもよいです、というスタンスだったの」

しかし、そんな「スタンス」はポストと昇給にしか興味のない男性たちには理解されなかった。同期が管理職を目指し始める30歳を過ぎた頃から自分を貫き通すことに疲れてきた。

「最後には、そういうつまらない世界でもがいているのが無駄だとしか感じられなくなったのよ」

斉藤のような「できる女」の出世を邪魔するものの正体、それは中高年男性による中高年男性のための企業文化である。つまり、年功序列で出世したおじさん管理職たちが、女性の活躍を阻害する状況を無意識のうちにつくり出しているのだ。

大手保険会社の人事部で昇進・昇格など処遇を担当する松谷浩一(仮名・30代後半)は、同じ金融業界にいる者として斉藤の退職を惜しむ。

図を拡大
図1 国際比較!管理職に占める女性の割合

「もったいないねえ。金融の仕事は女性のほうが向いているんだよ。筋肉が必要な業務じゃないし、家事で養った金銭感覚を顧客満足に生かせる。ルーティンワークをきちんとこなすのも女性のほうが得意。だから、30歳ぐらいまでは女性が能力を発揮して、現場のリーダーをやっているよ。後輩を育てるのもうまい」

しかし、松谷の所属する会社でも課長以上になると女性の数が激減する。正社員全体の35%以上は女性社員にもかかわらず、管理職は5%未満だ。

「なぜかって? 管理職のおじさんたちがやっていることは、マネジメントじゃなくて政治ごっこだから。斉藤さんが言うように、おじさんたちの最大の関心は社内人事で、『本当の花形部署はどこか』『やつは出世コースから外れた』みたいな話をするのがマネジメントだと勘違いしている。顧客や部下の顔なんて見てない。仕事ができる女性ほどバカらしくて仲間に入る気になれないのは当然だよ」