一方で、そもそも女性側の意識を問題視する声もあるが(図2参照)、松谷はこう反論する。

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図2 8割の企業は、「女性の意識」を問題視

「確かに、仕事ができないくせに産休、育休などは当然のようにフル取得する『権利主張型のローパフォーマー』もいる。そうした女性は全体の2割程度で、下位の1割は職場復帰せず退職するよう仕向ける。でも、このダメ社員の割合は男性も変わらないよ」

女性社員は最初から意欲が低いのではなく、おじさん中心の企業文化がやる気をそぎ続けているのである。権力闘争が表面化した読売グループは典型例だろう。市場争奪戦ならいざしらず、不毛な内戦に身を投じたがる女性は少ない。

大手小売りで管理職をしていた本田真紀子(仮名、40代前半)は、日本企業の管理職集団は「サル山」に似ていると喝破する。

「部長以上が100人以上いる中に、女は私も含めて3、4人しかいませんでした。集まると会議室が猛烈に臭いの。それだけでやる気が落ちますよ。それに、男ばかりが集まるとサル山になるんです。ボスザルの顔色しか見ない。保身が優先して、経営の視点に立って会社のためにものを言える人がいない。ポツンといる女が意見したところで『また女がうるさいよ』と切り捨てられる」

社会学者 上野千鶴子 
1948年生まれ。東京大学名誉教授。NPO法人WAN理事長。『不惑のフェミニズム』など著書多数。

役員人事の担当者として役員会にも出席することが多い松谷は、本田のサル山論に賛同する。

「役員会で大事なのは、議論の中身なんかじゃない。『誰が何を言ってそれを誰がどう受け止めたか』がすべて。例えば、専務の提案を社長が快く思っていないから自分も賛成するのはやめておこう、とか。損失隠しで揺れているオリンパスの役員もおじさんばかりだよね。トップと側近がノリノリで進めている事案に『それおかしくないですか』とは言えなかったはず。1人か2人でも女性の役員が交じっていたら違ってくるよ。オリンパスの場合は、女性がいないから外国人に間違いを指摘された」

社会学者の上野千鶴子には異論がある。女性が出世したくないのではなく、権力を持った中高年男性が女性を意図的に排除しているという。特に、伝統的な大企業で管理職以上は「メンズクラブ」なのだと主張する。

「私の直感では、男は女を3割以上入れたくないと思っている。それ以上に増えると企業カルチャーが変わってしまうから。メンズクラブという同質性の高い集団ならば、男同士で心おきなくやりとりできる。そこに(女性という)異文化が入ってくるとすごく面倒くさい。それが嫌なんだ」