【田原】日本の予備校の仕組みを、そのまま輸出できると。これはすぐ事業化できたのですか。
【税所】まずは現地の教育事情を知るために、バングラデシュの“東大”であるダッカ大学に行って100人の学生にインタビューしました。そこでわかったのが、予備校の存在です。バングラデシュの高校が終わるのは5月で、大学受験は11月。受験生はその間、街に出て下宿しながら予備校で勉強します。インタビューしたダッカ大学の学生も、9割が予備校の出身者でした。
【田原】へぇ、バングラデシュは予備校がそんなに発達しているの?
【税所】はい。僕は、バングラデシュはアジアの最貧国なので予備校なんてないと勝手に想像していました。ところが予備校が並んでいる通りがありました。これだけ予備校があれば優秀な先生もいるはずだと考え、学生たちにリストアップしてもらった人気講師の授業を1つずつ見学に行きました。
【田原】バングラデシュはベンガル語。授業を見学してもわからないでしょう。
【税所】100人インタビューをしたときに、マヒーンというダッカ大学の学生がパートナーになってくれました。おかげで言葉の問題はなかったし、言葉がわからなくても、しゃべるリズムや生徒の食いつきを見ていたら、いい授業かどうかはだいたいわかります。
【田原】いい先生を見つけて、それからどうしました?
【税所】「これだ」と思った英語、国語、社会の先生3人にアタックしました。日本人が突然やってきたので最初は目を丸くしていましたが、話すうちに、手伝ってくれることになったのです。
【田原】なぜ相手は信用してくれたのですか。普通は、お金もなさそうな若い人がきても相手にしませんよね。
【税所】2つあると思います。1つは、もともと日本人への信頼がずば抜けて高いこと。いままでバングラデシュで活動してきたJICAや企業のみなさんのおかげで、日本人というだけでいい印象を持ってもらえます。もう1つは、僕がマジなオーラを出していたから。信頼できるかどうかというラインは、わりとすぐに超えられました。
【田原】ギャラを相当、要求されたんじゃないですか。
【税所】一般的な予備校教師は1時間500円のギャラ。僕らが目をつけたのは、人気のある先生たちなので、1時間で2000~3000円。ただ、あまりお金がないということを説明したら500円でやってくれました。マヒーンは「予備校教師は人気商売。日本人と教育プロジェクトをやることがいい宣伝になる」と言っていましたが、そういう面もあったと思います。