先月来日した『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン教授が日本で最も頻繁に受けた質問は、「日本はどうしたらいいですか?」「私たちはこれからどうしたらいいですか?」だった。グラットン教授は困惑気味に言った。「こんなに自分たち自身の未来について外国からきた人に尋ねるのは日本人だけではないかしら」。そんな私たちの姿は、親に頼りきりの子どものように見えたようだ。『ワーク・シフト』には、変わりゆく世界のなかでなすすべもなく「漫然と迎える未来」と、ある覚悟をもって積極的に選び取っていく「主体的に築く未来」の対比を生々しく描いている。日本人が「主体的に築く未来」を目指すために必要なのは、誰かに答えを与えてもらうことではなく、自ら考えること――グラットン先生から日本の若い人へのメッセージである。

受け身の子どもから、自立した大人へ

2月6日に開催されたアカデミーヒルズの来日記念セミナー。

『ワーク・シフト』は2012年8月に日本で翻訳出版され、ビジネス書のベストセラーになっている。これは、「選択とその岐路に立っている日本のあらゆる年代の人のなかに、本書に書かれている「未来を選択することができる」とか、「いま選択することで未来が変わる」といった考え方に共感する人たちがいたからだろう。今回の訪日を振り返って感じることは、いまこそ、日本で働く人々、とくに1980年以降に生まれたY世代の若い人々にとって、重要な選択の時期であるということだ。そのことを、現在の日本における企業とその社員との関係をふまえて説明したい。